＊俺の彼女短いお話集50＊ (ページ22)

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名前も知らない貴女と。ページ22

お話集45に描いたものの
逆バージョン。

呼ばれるのは、太輔君。
呼ぶのは…貴女。

＊

明らか場違いと分かる超高級ホテル

エレベーターは、俺の不安を煽るように

ハイスピードで上がっていく

足音を吸収する毛足の長いカーペットを

踏みしめて…指定された部屋のドアをノックした

「は、…い…」

.

.

どんな人が

俺を指名してくれたんだろう

このバイトを始めて二週間、全然お呼びがなかった

先輩に、真面目すぎるんじゃね？

ちょっと髪染めたら？って言われて

今日の午後には美容院を予約したくらい

俺を指名してくれたのは、どんな女性なんだろう

こんな風に、オトコを買うのは…

一体どんな女性なんだろう…

.

.

太「失礼します…」

飛び出しそうな心臓の音を感じながら

そう言って入った俺を迎えてくれたのは

想像したのとは、全然違うタイプの女の人だった

.

.

流行りのグレージュのワンピースに

黒いシンプルなハイヒール

そして、一つにまとめた黒髪は

毛先だけ巻かれて、耳にはパールが光ってる

歳だって…俺と同じくらいじゃ…

「あの…？」

きっと、多分…すげーガン見してた俺は

声をかけられて、我に返った

太「あ、…ごめんなさい…」

なんか、想像と違う

予定と違う

予定では…

ちょっと派手目な奥様が

若い子いいわーとか、笑いながら

ほら、シャワー

はい、脱いで

って…全部をリードしてくれると思ってたのに

全然…違う…

.

,

「あ、…」

「と…座られますか？」

太「あ、はい…」

促されて、ダブルベッドの横にあるソファに

浅く座った

「何か…飲みますか？」

そう言って冷蔵庫を覗いた彼女

え…と

あの…

いいんですか？

こんな感じで…

今日のコースは、確か2時間で"最後"まで

こうしてる間に、刻々と時間過ぎていきますけど

確か先輩の話では

入るなり…ガンガンってーー

「アルコールがいいですか？それとも…」

太「こっち、来て…」

「え…」

太「来てよ…」

このまま時間が過ぎて、最後まで行けなくて

クレームが来て、クビになるのは勘弁

そう思った俺は

意を決して彼女の手首を掴んだ