苺は、私。20 ページ19
裕太side
「教えて…くれる？」
くりんとまつ毛が揺れて
並んで膝立ちしたAが見上げた
「え…？」
「裕太…教えてくれる？」
…A
「私…」
「シたこと…ない…」
ツン、と
可愛い唇がアヒルみたいに尖った
それ、って
「裕太が…望むなら…」
「シてあげたい…」
「何でも…」
.
.
"シてあげたい"
その一言だけで、俺の身体…
下…半身が熱くなるのを感じた
「A…」
「ほんとは…もっと前から…」
？
「シて欲しいのかな、って…
シた方がいいのか、って思ってたの…でも…」
でも？
.
.
「怖くて…」
怖くて？
「うまく出来なかったら…って…」
「裕太に、軽いオンナって思われたら…って…」
「だから…」
「怖くて…出来なかった…」
.
.
「ごめんね…」
ぽろっ、と
頬を伝った一雫の涙
俺は…
本当にAを見てなかったんだと
改めて知らされた瞬間だった
誰よりも
舞台の成功と俺の無事を祈っていたA
そして
俺とのせ、くすも
ただ、ただ
欲求を押し付けるだけだった俺は
彼女の戸惑いや想いに気づいてなかったんだ
Aは
俺が思う以上にずっとずっと
俺を愛してくれてたんだ
その身体、全てが愛おしい…そう思って
指先の一本までも愛そうとした
でも、今は
その頬を伝った涙さえも愛おしいよ
「A…」
ゆっくり…その涙を指先で拭って
両手で、頬を包んだ
「ごめんな、不安にさせて…」
「Aの気持ち、気づかなくてごめん…」
「裕太…」
「俺は…全然…Aを見てなかった…」
「わかってると思ってたけど…」
「全然…わかってなかった…」
「ごめん…」
ぎゅ、
今日は…こうして何度抱きしめただろう
本当のAを知って
彼女の想いがわかって
何度、この胸に抱きしめただろう
「A…」
「…？」
「俺さ…すげーAが好き…」
「裕太…」
「もう、ほんとヤバいくらい好き…」
「…笑…」
「好きで好きで…仕方ない…」
「世界で一番、愛してる…」
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作者名：トウコ
| 作成日時：2018年9月29日 15時
