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「でも…」
裕「必ず、朝までに帰すから…」
もう…3時前なのに？
「明日…早いんです、会議で…」
今からあそこまで….って
着いたら直ぐに帰って来なきゃいけない
電話を切った時
ずっと側にいたい、そう思った気持ちは
夜風に乗って香ったさっちゃんと
さっちゃんと玉森さんが愛し合った残り香で
一気にしぼんで行く
この人は、
ついさっきまでさっちゃんと愛し合ってた
この指先が、さっちゃんを溶かし
あの唇が、キスを重ね…
この逞しい胸が、さっちゃんを抱きしめて…
そう思うと…
微かな残り香が、私の身体中を覆っていく
「逢ったから…それでいいですよね？」
裕「？」
「もう、いいですか？」
彼は、私を想ってくれてる…
さっちゃんの所からでさえ、連絡をよこすくらい
そう思った自信と優越感を
玉森さんが纏った二人の逢瀬の残り香が
全部消し去り…崩していく
「帰っていいですか？」
裕「Aちゃん…」
「もういいでしょ？」
あんなに逢いたかったのに…
本当は…嬉しかったのに…
裕「ごめん…って…」
「……」
裕「だから、シャワーするから…あそこ行こ？」
シャワーするから？
それって…
「…！！」
ありったけの力で玉森さんの胸を突き放した
「バ…カッ！」
裕「何すんだよ…？」
…
…
「酷いよ…いつも…いつも…」
「酷いッ！」
裕「！？」
「急に職場に来たり…呼び出したかと思うと
さっちゃんと一緒だったり…」
「夜中に呼び出して…他の…」
裕「………」
「他のオンナの人の香りさせて…
なのに、私を抱きしめるなんて…酷い、酷すぎる」
「酷いよッ！」
もう、その腕の中にいたくなくて
玉森さんの胸をバンバン叩いて…
いっぱい叩いて…涙が溢れて…
夜中の住宅街なのに…
真っ暗なのに…
「嫌いッ！」
「玉森さんなんて、大嫌いッ！」
「離して…」
「離してッ！！」
この腕の中から…解放して！
裕「嫌だ！」
裕「絶対、離さない！」
裕「俺のものにするまでは、絶対離さない！」
「嫌ッ！」
裕「嫌じゃない、黙れッ！黙れ………」
「…ッ！」
貴方に捕まった唇…
キスなんて…
嫌…
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作者名：トウコ
| 作成日時：2018年5月26日 6時
