翡翠の涙。瑠璃の笑み。〈俺の彼女 お話集38〉

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彼女side


「わぁ…」




「綺麗…」






都心から少し離れた住宅街







大きな銀杏の木のある公園






裕「俺が…」




裕「小さい時、よく遊んだ公園なんだ…」







そう言って

裕太は、公園のすぐ近くの駐車場に車を止めた







裕「こっち…」





助手席から降りた私の肩を

そっと包んだ裕太






夜の風が

またふわっと甘い香りを運んでくる






裕「こっちだよ…」






…？






暗闇に白い提灯のついた

桜並木と反対に歩き出した裕太








「こっち？」





裕「ん…」







裕「あっちは、意外と人が多いから…」







確かに…

遠目に見てもかなりの人混み








裕「それに、こっちが穴場…」






…ッ



「あ…」





裕「ふふ…」





裕太の指先と繋がった私の指先





「あったかい…」





裕「冷たい…」





笑






あの日以来の裕太の手


繋がった指先








人混みに背を向けて

公園の奥へと歩いてく







「……あ…」




裕「ね？」







「き…れ……い…」





小さなライト一つで

下から照らされた






小さな…細い…

枝垂れ桜…



薄ピンクの…桜






公園の隅にひっそり咲いた桜









「綺麗…」




裕「でしょ…」







裕「こないだ見つけたんだ」






「？」







裕「……」





小さな明かりに照らされて

真っ赤になった裕太の白い肌






裕「下見に…来たの…」






「え？」





裕「どこの桜が綺麗かなーって…

あちこち…下見に行ったんだ…」








「…う…そ…」



だって

毎日、お仕事だった


休みなく、夜遅くまで…




そんな中で？







裕「だって…」






裕「Aちゃんと行くんだもん…」





裕「なかなか会えないんだもん…」








裕「楽しみだったんだもん…」







そう言って

自分に言い聞かせるみたいに

呟く裕太







「……裕太…」








裕「楽しみだった…」





裕「会いたかった…」







裕「ずっと…」







ぎゅ…抱きしめられた身体



裕太に包まれた私







私を想い…

忙しい中、連絡を取り続け…

二人の為に

桜を探した裕太








愛しい…


可愛い…人…







背中に回された指先から

貴方の愛が伝わってくる








「裕太…」





裕「？」






「ありがと…」


そう言うと…

私は…

私の意思で裕太の背中に腕を回した

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