俺の彼女 ＊短いお話集＊ 29

横恋慕 ６ ページ6

☆ニカちゃんside



太「忘れてたな…」





デビューして人気が出て…

ドームでもライブが出来るようになって



衣装だって

先輩のお古じゃなく、

自分達の要望を入れられる…



ちゃんと俺たちの身体に合わせて

採寸して貰える…


それが、当たり前になって…









太「大事な事…忘れてたな…」






そう言って

ガヤさんは、彼女を見つめた。









太「君…名前は？」






…






…






そう、この時まで

彼女の名前を知ってたのは

俺だけだったんだ。






メンバーで

彼女の名前とその素晴らしさを

知ってたのは…俺だけだったんだ。





俺だけが、

衣装どころか、スタッフアシスタントとして

スタッフさんのお手伝いをしてた頃から

彼女を見つめてたんだ。






そう、もう一年以上前から。







…






…






…







一年前の、あの日…

イヤモニの調子が悪くて

いつもみたいなパフォーマンスが出来なくて

イライラしてた俺に…





子どもみたいな笑顔で、近づいて来て




『二階堂さん…』







『らしくないぞ(笑)』



って笑って…

ホッペ、ふにふにしたんだ…




声も出せずにされるがままで、

固まった俺だったけど



あの時から、





俺は…

ずっと…彼女だけを見てきた。









『笑ってる二階堂さんが好きー』


それが、彼女の口癖だった。





最初は、彼女も

俺の表面しか見てないんだ…って思ってた。







でも、それは全然、違ってた。





彼女が…そう言ったのは

他の人が言うような…ただ明るいだけの俺が

好きーって意味じゃなく、



ファンの皆は

どんな事も笑いに変えられる…そんな

強くて明るいニカちゃんが好きだよ…

って事…だった。






そう、

彼女は…いつも…ファン目線…。




私なら…


私がファンだったら…って。





そう思って

俺たちの側にいてくれた。






スタッフとして…



衣装さんとして…








そんな彼女を

俺は…側で見てるだけで幸せだった…






それで…十分だった…。





それ以上を…望もうなんて思わなかった。








…







…








…








でも…








自分からアプローチなんて絶対にしない

ガヤさんが、彼女を口説き始めたんだ。







あの日…

衣装の事を決めた日から…






いや、

ガヤさんがアプローチしなかったら

他のメンバーが…したかも…







そんくらい…

彼女は魅力的だったんだ…

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