俺の彼女 ＊短いお話集＊ 29

横恋慕 ５ ページ5

☆ニカちゃんside


ガヤさんが、Aさんを

気に入ったのは…どっちが先だったかな？








彼女…自身？



それとも…




彼女の衣装さんとしての…才能？








どっちだったかな…







…







…






俺らの衣装作りは

衣装さんだけじゃなく、

メンバーの意見が大きなウェイトを占める。






特にライブの衣装は、

曲のイメージや、メンバー全員のバランス、

一人一人の個性、

更には、衣装替えがある関係で

着やすさや脱ぎやすさまで

考えなきゃいけない。








特にガヤさんは…拘りが強い。



強くて

自分の意見を曲げない…





こと…

衣装と…振り付けに関しては…。








だから

これまでのライブの衣装でも


ガヤさんのだけは…

本人の拘りの強い衣装が多かった。






でも



前回のライブでAさんが

ガヤさんの衣装に意見したんだ。






きらびやかな衣装で飾るより

藤ヶ谷さんの声と、ダンスで魅せる方が

観に来てくれるファンの

゛記憶゛に残るんじゃないか…って。






…





…







その時の打ち合わせを

俺は、今でもはっきり覚えてる…




あの一瞬の間に、張りつめた空気。







あの頃は、まだAさんは

いちスタッフに過ぎなかったし…





いや、

それでなくても

マネージャーやメンバーだって

ガヤさんには意見は言えなかった。






血の気が引いていく、衣装担当のチーフ。



固まったメンバー。





ガヤさんを宥めようと

立ち上がったマネージャー。









絶対…クビだよ。




間違いなく…クビ。






そう、誰もが思った。







ガヤさんに…

意見するなんて…。









…







…







でも




静まり返った空気を破ったのは

他ならぬガヤさんだった。









太「記憶に残る…か」






…






…








太「それ…」









太「忘れてたな……」





テーブルに散らばる衣装の見本を

じっと見つめるガヤさん。







太「ずっと…そう思ってやって来たのにな…」





確かに…





そう、納得したのは

ガヤさんだけじゃなかった。








俺たちは

Jr.の頃

どうやったら、見る人の記憶に残り、

名前を覚えて貰えるか…

そればっか考えてがむしゃらに

やって来たんだった。






先輩から回された衣装を着て

安っぽいペラペラの衣装を羽織って

皆に

覚えて貰う為に

必死にパフォーマンスして来たんだった。

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