俺の彼女 ＊短いお話集＊ 29

悲恋 &Ｔ23 ページ34

裕太side

「あ…」







「………ん…」







始まりは

いつも



ここから…





君を抱きしめたまま


後頭部に回した腕を少しだけ傾けて


そして

顔を埋める…





君の…


白い…首筋に









雪のように白くて

絹のようにすべすべの肌




そこに

そっと

優しく…



唇を宛てがい

ゆっくり


目を閉じる…







「お願い…だから…」





君は

最後に、ただひとつの願いを

俺に乞う…







いつも…必ず…







「痕…付けないで…」








"印をつけないで"…と








俺に言われるままに

ここに来て

俺に言われるままに

俺に愛される





そんな従順な君の

ただひとつの願い








「わかってる…」








言われなくても

わかってる…







君は

俺のじゃないから…

他の誰かのだから…



印をつけちゃだめ、って事くらい

俺だって、わかってる…








「わかってる…よ…」








溢れてしまいそうな涙を

堪えて…





また

君の首筋に顔を埋める…






ちゅ







ちゅ…ちゅ…





いつか

ここに…俺の、って印が

できるようになるのを信じて…





祈りを込めて

キスを落とす…






裕「愛してる…」







裕「君を愛してる…」









裕「君だけを…」









裕「君が…俺の生きる証…」







裕「君がいなかったら

生きる価値なんてない…」







ちゅ







裕「君が…俺の全て…」







ちゅ







裕「この時だけが…」








裕「俺が…生きる時間…」








言葉と共に

落とし続けるキス






呪文のように


繰り返すキス…







それが



君に


君の愛する男を忘れさせ



その感覚を





麻痺させていく呪文…

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