俺の彼女 ＊短いお話集＊ 29

悲恋 &Ｔ20 ページ31

裕太side


「でも、その前に…」






裕「…？」







「靴…脱いでいい？」





裕「あ…」







笑









裕「はい…」








君が、この部屋に来るようになって

すぐに買い揃えたルームシューズ




ふたりお揃いのルームシューズ





俺が黒で、彼女がオフホワイト…







今までは

ルームシューズなんて買った事なかったけど

Aが始めて部屋に来た時

彼女の脚はまだ傷だらけで

そのままフローリングを歩く姿が

痛々しくて

Aを送り届けた後そのまま買いに行った。







「ありがと…」






いつも

彼女にルームシューズを出すのは役目





まるで

お姫様に靴を履かす家来みたいに

傅いて…

俺が傷つけてしまった足にルームシューズを運ぶ…






裕「まだ…

傷が残ってるね…」









裕「痛む…？」







足元に傅いたまま

Aを見上げる…








「もう…大丈夫だよ…」







「全然…大丈夫…」








いつものように

君は答える…






"大丈夫だよ、"って…






まだ

ルームシューズを履く、その瞬間にも

痛む足首を庇うのに…





痛まないはずないのに…









「裕太…？」








まだ

腫れの残る足首…






あの日、俺に引き摺られて出来た傷…








裕「ごめん…」







君は

君の愛する人に

この傷の理由を何と言ったんだろう？


なんて嘘をついたんだろう？



そして

君の愛する人は

この傷を見て何と言ったんだろう？







俺が…

つけた傷を見て…









「裕太…？」





「どうしたの？」









「裕…太？」







…






…







裕「ごめん…」






そっと

腫れた足首に指先を這わせた




きっと

跡が残ってしまう…




君の

この綺麗な肌に…







裕「許して…」







裕「A…」








君の足先にキスを落とす







こうする事で

この傷が消えればいいのに…




痛みも傷痕も…

なくなれはいいのに…







神さま

お願い…







そっと

その傷痕に唇を近づけて

ゆっくり

ソコに貼り付けていく







神さま

早く直してあげて





あの日、波と戯…れてた綺麗な足に

戻してあげて….







冷たい君の足…



俺が熱をあげる…


君の全てを温めてあける…









「裕……太…」







「裕太…」





「や…めて….」








「お願い…だから…」

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