俺の彼女 ＊短いお話集＊ 29

悲恋 &Ｔ15 ページ26

裕太side


戸惑いながら

後部座席のドアを開けた君に

俺は、財布から取り出した一万円札を

投げつけた…






裕「タクシーで帰って…」








「……？」







裕「同情なんかいらない…」






そう言うのが

やっとだった…






だってまた

涙が溢れて

君の瞳を捉えた瞬間に溢れだしたから…






ただ

同情しただけの君の気持ちを勘違いして

いい気になって

幸せだと

幸せな時間が戻ってきたのだと

勝手に勘違いした俺が

余りにも惨めで悲しくて

もう…

溢れる想いを止めることは出来なかったから…








裕「ばいばい…」








そう言うと

車のエンジンをかけた








裕「ドア、閉めて…」









「玉森さん、待って…」







「話を聞いて…」








なんの話？




また

アイドルなんだから笑え…って言うの？





みんなの為に笑え…って？





俺はもう…ダメなのに




俺なんか…だれも

必要としてないのに…？









裕「付き合ってくれてありがとう…」








裕「忙しいのに…」




ドアを掴んだ指に光る指輪




他の誰かのものである君

他の誰かを愛してる君





他の誰かに愛情を、注ぎ…

俺には

ただの同情…







裕「同情で…付き合ってくれて…」





さぞかし

滑稽だったよね？




ただ同情してるだけの君に

こんなにまでも

心を許してる俺の事…




心の中で

笑ってたんじゃないの？









「玉森さん…」









裕「やっと…決心がついたよ…」








「……？」






君に感謝しなきゃ


俺の気持ち…押してくれたんだもんね



ずっと

考えてた事の答え

教えてくれたんだもんね









裕「消える…勇気…」







「何…言って…」








裕「芸能界から…」









「……？」




「どういう事？」









裕「いや…」









…








…









裕「この…世界…から…」






消える勇気

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