Brother 君は僕らの愛しい妹。

泣ける場所 ページ12

太輔side

おかあさんが、いなくなって

結わくことなく、下ろされた髪が

風に揺れる…






「でも…」





太「……？」






「教えて貰っとけば良かったな…」






太「……何を？」







「……編み込み…」






「編み込みだけは…」






「自分では…出来ないの…」




そう言うと

風に揺れた髪をそっと束ねた…






「切っちゃおうかな…」







太「…え…？」







「切っちゃおかな…もう…」







「もともと…おかあさんに

編んで欲しくて伸ばした髪だし…」






「洗うの…大変だし…」





「乾かすのも…大変だし…」






「重いし…」







「……ッ…」







「もう…」







髪を束ねた指先が

小さく震えてる…


白くて…可愛い指が…







「もう…おかあさん…」






「いなくなっちゃったし…」







「…ッ…」






「う…ッ…く…」






ほんとは

もっと泣きたかったんだ…って

やっと分かった。




宏兄や…俺や裕太に

励まされて…笑顔になった、と

思ってたけど…




その傷は、全然癒えてなくて

凄く…凄く…

寂しくて…悲しくて…

不安に押し潰されそうだったんだ…




俺たちに気を使って…

あんな風に笑ってたんだ…

って…やっと分かった。







太「こっち…おいで…」





「……？」








太「いいから…」





「…！？」






「太にぃ…？」





髪を束ねてた指を、右手で掴む…




初めて握ったAの手…






「太にぃ？」





戸惑うAをよそに

繋いだ手に力を込めて

細い路地を抜けていく…






…





…







「……？」







「こんなトコに…神社…」







太「俺の…」





太「秘密の場所…」






「秘密の…場所…？」





太「そう……」






太「うちってほら…大体…家に誰か

いるじゃん…宏兄とか…裕太とか」






太「まぁ…仲いいから…

一緒でも…全然いいんだけどさ…

普段は…」








太「でも…時々…」





太「一人になりたくなる…」






太「一人で…何にも考えずに…

空を見たくなるんだ…」





階段を上りきると

蝉の鳴く雑木林が、一気に開けて

青い空が見える…








「…わぁ！」






太「いい眺めだろ？」





俺たちが住む街が一望できる…

家も…学校も…駅も…






太「泣きたかったら…」





太「泣いたらいい…」






太「我慢しないで…」






太「…思いきり……泣けばいい…」

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