Brother 君は僕らの愛しい妹。

彼女の過去 ページ11

太輔side


無愛想な子だな…


それが、Aの第一印象だった






ろくに挨拶も出来ない…

相手の顔も見ない…


一体、どんな育ち方したんだか…








かたや、俺たちは

母さんに厳しく躾られた…






挨拶も…行儀も…

食事のマナーも…

言葉使いも…

それに

自分の事は、何でも自分で出来る

ように躾られた。







それに比べて、その頃のAは

朝は、おかあさんに起こされる…

テーブルに座ると食事が出てくる…

熱ければ

おかあさんがふーふーしてやる…


そして

食事が始まると

Aの長い黒髪を

おかあさんが器用に編み込んでいく…






゛無愛想で…

何にも自分で出来ない…赤ちゃん…゛




それが、

おかあさんが、亡くなるまでの

Aの印象だった…







でも、それが

Aなりのおかあさんへの

愛情だと知ったのは、おかあさんが

亡くなった後だった。





暫くは、部屋に籠りっきりで

泣き暮らしてたA…




でも、初七日を終えたあの日を境に

別人のように明るくなった…





いつもは、宏兄や裕太がいるのに

珍しく二人での学校からの帰り道、

Aは、白い雲が浮かぶ青い空を

見上げながらその理由を、とつとつと

話し出したんだ。






「おかあさんは…

ずっと身体が弱かったの…

私を…産む前から…

ううん、もっともっと小さい時から。




学校も、留年して…

でも、お医者さんになりたくて

猛勉強した…って。

でも、結局…ハードな仕事について

行けなくて、またすぐ入退院を

繰り返すようになってしまった。



赤ちゃんだって

絶対、無理だろう…って

言われてたのに…

どうしても産みたい、って

言い張って、私を産んだの…。

殆ど、自…殺行為だった…って

おとうさんは言ってた…。





で結局…その後もまた…入退院の繰り返し。



私を産んだことで、益々…体調を崩しやすく

なったのが、お父さんと上手く行かなくなった

きっかけだ、って聞いたことある｡




おかあさんは、よく言ってた。


『私はAに何もしてやれない』って…。


『母親らしいこと何もしてない』って…。




だから、私は…

おかあさんが、退院してきた時は

普段自分で出来る事も、

出来ないふりして

おかあさんに甘える事にしたの。






それで、おかあさんが幸せなら…

それが、おかあさんの生き甲斐になるなら…

って思って、おかあさんに

沢山…沢山…甘えたの…」

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