俺の彼女 ＊短いお話集＊ 28

Brotherーその始まりー &F6 ページ32

太輔side


『よくある事…なんです…』






！？







『小さい時から…ずっと…』




彼女の処置を終えた30代半ばの医師は

脈をみていたAの手を

布団の中に入れると

優しく微笑んだ…。







『何度こうして…ここに運ばれたか

分からない…』







そんな

彼女…

大学の時は一度もそんな事なかった


ただの一度も…。








『大学の時は…元気だった？』







太「…はい…」








『そうか…』







『そんなら…彼女の願いは

叶ったって事だな…』








太「彼女の…願い？」






『そうだよ…

その願いを叶えたくて、東京の

大学に行きたがったんだ…』








『こっちの方が…空気もいいし…

身体にいいのに……』








…？








『彼女は、僕の初めての患者だ…

大学に行くまで、ずっと僕が見ていた…

小さい時からずっと特別な子。


体育は出来ない、友達との遊びも

制限される、休みの多い子…。




入退院を繰り返す…

身体の弱い…子。



周りがいつも気を遣う…特別な生活…

特別な子ども…だったんだよ…』






…





…








太「そうだったんですね…」







『君は知らないだろ？』







太「……はい…」







『それでいいんだよ…』







太「…？」






『彼女は、そんな自分の過去を知らない

自分を特別扱いしない所…

知らない人の中に入りたかったんだ…』







太「……」








『だから、さ…』









カチャ…

先生が、部屋のドアを開ける…







太「…？」







『帰って欲しいんだ…今すぐ…』







太「…へ？」



何…急に…言って？








『彼女に逢わずに帰ってくれ…』






太「…なんで…」






『彼女は、君に…

こんな姿見せたくないんだよ…』








『見られたくないんだよ…』







太「……」









『分かってくれよ…』





太「でも…」






『彼女の事が…今もまだ…好きなんだろ？』







太「…え…」








『(笑)…顔に書いてあるよ…』





あ、いや…

そんな、こと…な…







なんで…バレるんだ？









『それなら…尚更だ…』







…？





『大好きな彼女を、傷つけたくないだろ？』



太「………」






挑発的な目が、俺を見つめる…





『それが…』






『本当の…愛…だろ？』

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