俺の彼女＊短いお話集＊17

貴女の胸に抱かれて F 55 ページ3

太輔side

PiPi…PiPi…




…？






長瀬「…呼ばれた…」





あ、

先生の…PHS…






さっきと

同じ音…






長瀬「……」






長瀬「行かなきゃ…」






長瀬「藤ヶ谷…君…」







太「はい…？」






長瀬「彼女を…」





長瀬「見てて…貰えるかな…？」







太「…？」







長瀬「まだ…一人には出来ない…」







長瀬「ほんの少し…だけ…」







長瀬「彼女を…頼む…」






…





…






太「…はい…」







長瀬「無理させないでね…」






長瀬「側で…見てるだけだよ…」







太「…何ですか…それ…」







長瀬「いや…」







(笑)






少しだけ…

和んだ空気…







長瀬「すぐ…戻るからね…」






長瀬「A…」





Aの頭の上にある


俺の手を払って…



自分の手を乗せて…


優しく…


ポンポン…









長瀬「待っててね…」









太「…先生…ッ…！」







長瀬「…(笑)…」







PiPi…PiPi…







太「呼ばれてますよ！」





長瀬「はい、はい…」







長瀬「行きます、行きます！」







…





…







長瀬「頼むよ…」







太「はい…」





名残惜しそうに


ドアを開けた先生が


出ていき…





扉が…




閉じる…






三ヶ月ぶりに訪れた…


二人だけの時間…







話したい事は


山ほどある…






聞きたい事も…

山ほどある…





でも…


Aの顔を見てたら…


もう


それだけで



幸せで…





何も…いらない…








太「涙…拭こ…」







真っ赤な瞳…


長い睫毛も…


涙で…濡れてる…









太「辛かったね…」







優しく…





そっと…





溢れた涙を拭く…








太「寂しかったろ…」







小さく…


頷く…A…








太「ごめんな…」






太「気づかなくて…」






゛ううん…゛


って…揺れる首…






太「側にいてやれなくて…」





太「ごめんな…」









「ちが…」






「太…ちゃん…は…」






「悪く…ない…」






「悪く…ないよ…」








太「これ…持って来たの？」





テーブルの上の

ニット帽…








「ん…」







「ほんとは…」





「全部…置いてくつもりだったの」






「でも…」







「でも…寂しくて…」








太「ん、…」







太「そう、だよな…」







太「寂しかったよな…」

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