幻夢（仮題）短編集 2

哀傷　21 last ページ7

もう二度とAを離したくない、
ぐったり横たわり、でも、幸せそうに微睡む君を
見てそう思った


このまま、君を起こさなければ
君は、俺のものなる






そうさ、このまま…


君だって、それを望んだよね？

死んでもいい、って言ってくれた





君は、俺だけのものになるんだ






.







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急に陰り始めた空


そうだ、今日は夕方から雷雨って




雨….か


ふと、雨に濡れるAを、想像して
すぐに、頭を振った



そうだ、今日は帰さないんだった




明日まで、ここにいればいい
二人で朝を迎えればいい、明日は快晴だろう







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そう、いくら言い聞かせても
静かに眠るAを見ると胸が騒めいた


本当に、それでいいのか


それが…Aの幸せなのか





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きっと君は、日が落ちたこの部屋で
目が覚めても、雨の中でも、アイツの所に帰ると
言うだろう



アイツが、激昂していると分かっていても
必死に言い訳を考え、嘘で固めて
アイツの元に帰るだろう




それから、君はどうなる？



アイツに責められ…
アイツに問い詰められ…
きっと…
全てを話し、全てを失うだろう





君が、泣きじゃくる姿が目を浮かんだ




愛しい君
大好きな君
誰よりも大切な女性、A




君を、これ以上苦しめたくない


苦しむのは、俺だけでいい

だって…
今日だって俺は…君から沢山の幸せを貰った


満たされたから





.




.





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太「A…」




「……」




太「A、起きて…」




「…ん、ッ…」




太「雨が降って来るよ…」




「え？」

シーツで身体を覆ったまま、半身を起こし
窓の外を見たA




太「今なら間に合うよ」



今なら…雨に降られることも…
アイツに疑われることもない




「…ありがとう、太輔…」




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.




俺の匂いを全てシャワーで洗い流して
君が、部屋を出ていく




太「次は、いつ逢える？」




「……」





太「ごめ…」

こんな事を言えば、君が困るのは分かってるのに…



「….太輔…」

来た時と同じように身支度を整えたAが、俺を見て微笑んだ




？




「…私は、いつも太輔といるよ…」


「太輔の事を考えて、太輔を感じてるよ…」




.





.



「私が、愛してるのは、太輔…」




「太輔だけを愛してる…」





「愛してるよ、、、」


end

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