哀しいkiss 3 (ページ41)

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太輔side

太「救急箱持ってくるね…」

下…着をつけて
そう言えたのは、それから少し経ってからだった

「……ん、」

Aの涙は、まだ乾いてない

今朝、開けたばかりの救急箱

もしかして、これを見たら全てを思い出してしまうかもしれない

君と俺が、一度は別れたことを

.

.

絆創膏と薬だけを持って寝室のドアを開けると
Aは、もう部屋着を着てた

もう、終わりってことか

そうだよな、あんな風に俺が怒鳴ってしまった以上
その先には進めない

太「薬…つけて…」

重苦しい空気を払拭したくて
まるで、何もなかったかのように甘えて言った

今日は、久しぶりだったから
だから、あんな風に気になってしまったんだ

だから、きっと次は大丈夫
だって、ほら…
ドレッサーに映るAへの気持ちには
少しの変化もない

たまたまあの瞬間だけ、
あの時のことが過っただけ…

「…ん…」

瞬きを繰り返してるのは…不安な証拠
俺が、怒鳴ってしまったからだ

太「優しくしてね、笑」

少しでも、空気を和らげようとおどけて見せる

それでも…
君は引きつった笑いを浮かべるのが精一杯
今にも泣き出しそうだ

太「ごめん、A…」

太「大っきな声出して…」

.

.

薬を持つ手が、止まる

「…う、ううん…」

太「悪かった…」

「……」

小さく首を振ったA

太「何か、…最近変だな…」

そっと、Aの首筋に手を伸ばした

太「こんな風に君を、傷をつけたり…」

「……」

太「忙しいせいかな…」

「……」

太「きっとそうだよ…
ミュージカルもさ、17曲も歌うんだぜ？」

俺の話を信じてるのか、いないのか
わからないけと….独り言みたいに続ける

太「おかしいわ…、俺」

「…太輔…」

太「だから、気にしないで、ね？A」

「……」

太「大好きだから…」

太「舞台終わるまで…それまで、俺の情緒不安定を
許してください！」

笑って、出来るだけ明るく言った

きっと舞台が終わる頃には
Aの全てを受け入れられる、そう信じて…
願いを込めて、俺は自分自身に言い聞かせるように
そう言った