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16. ページ17

「Aちゃん、一寸善いかい」
『? はい、何でしょう』

 太宰さんにお呼ばれ 私何かしたかな

 太宰さんの横に並び、付いて行く

 横顔を見上げると、前を向く太宰さんの横顔が見えた
 …矢っ張り、綺麗な顔してるな、なんて

 あれ、あたし昨日から太宰さんの事意識しすぎじゃない?
 …そんなこと、ね

 窓際まで来たとき、太宰さんは振り向いて云った

「君は何処から来た?」

『え?』

 自分でも驚愕するような声が出た
 でも、其れより

 太宰さんの温度のない声と、全てを見透かすような
 深い瞳に驚いた

 何も云えなくて、瞳から目が離せない

 なんて云ったらいい?
 この目は、嘘がすぐにばれる。

「…否、答えたくないなら善いんだよ」

 突然済まないね、と云った目は元の目だった

 一寸、怖かった

『すいません。その話は、また今度で』

 今は、話したくない

「そうだ、試験だと分かった瞬間笑っていたね」

『嗚呼、私、驚くと笑っちゃうんです』

 これは、昔からの変な癖
 驚きと安堵と呆れと、色々混ざって笑ってしまう

「うふふ、何か分かる気がする」

 ふと、彼が下を向く
 伏せられた睫毛が長い

 彼の動作一つ一つに、思わずドキリとする

「如何したのだい?何か顔に付いている?」

『あ、いえ、何でもないです』

 彼の瞳は、先刻とは違って柔らかい

 でも、吸い込まれそうなくらい深い

「太宰さん、敦君の家財道具買いに行きませンか?」

「善いよ。直ぐに行こうか」

 あれ、爆弾魔役の青年って

「彼もね、探偵社員なのだよ」

 私の心を見透かしたように云う

『え、そうなんですか!』

 若くない?まだ成人していない気がする

「そうだ、Aちゃんのものも買おうか」

『良いんですか!』

 やった!服もないから困ってた

「所為、皆待っているから行こうか」

 外套を翻して歩いていく太宰さん

 置いて行かれないように後を追う



 ここに居れば、楽しく過ごせるかもしれない

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設定タグ:文スト , 太宰治   
作品ジャンル:恋愛
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菜種梅雨佐矢花(プロフ) - 公式LINE楽しみにしています。これからもう頑張ってください (2020年10月9日 21時) (レス) id: 495b618e4b (このIDを非表示/違反報告)
ユッカ(プロフ) - ありがとうございます!明日か明後日には更新しますのでよろしくお願いします!! (2019年8月15日 21時) (レス) id: 2a8d441004 (このIDを非表示/違反報告)
夏色炭酸水(プロフ) - とても面白いです!!これからも頑張ってください! (2019年8月15日 18時) (レス) id: 4b5d2ae9b9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユッカ | 作成日時:2019年6月23日 14時

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