言ってみ? ページ40
…額をくっつけられて、嫌でも視線が絡み合う。視界いっぱいに沖田隊長が映っていて、逃げ場がない。頬に触れている沖田隊長の手のひらは、だんだんと熱を持ち始めている。まるで、私の頬に帯びた熱が、移ってしまったかのようだった。隊長の端正な顔が、少し動けば距離が0になるくらいに近くにあって、くらくらしてくる。頭が、ふわふわとしてくる。
…何も考えられないくらいで、思考が回らなくて、そんな私をじっと見つめる沖田隊長は、囁くように呟く。
「…もっと見せろよ、真っ赤な顔」
「…ッ、ぅ…」
……やっぱり、彼は楽しんでいる。そうに違いないのだ。私の真っ赤になった情けない顔を見て、笑っているんだ。そう思うのだけれど、逸らしたくなるこの目に見える沖田隊長の顔は、至って真剣な表情をしていて。見覚えがあると思ったのは、多分、あの時。
『好きだ』
『惚れたっつってんだ』
『日下部A、テメェに惚れてる』
…沖田隊長が、私にそんな言葉を告げた時だろう。その時も彼は、こんな顔をしていた。そして、熱が隠った目で、真っ直ぐに見つめられていた。ゆらゆらと、まるでその瞳の奥で炎が燃えているかのような、そんな揺れる目で。沖田隊長の赤い目に、私だけが映っている。
…今この世界に、私と彼しかいないのではないかという、おかしな錯覚まで起きてくる。
「……お、おき…た…」
「なァ、言ってみ?」
「な、にを…ですか…」
「…好きって、言ってみ?」
…と。まるで、私にだけに伝えようとしているような、いや、そもそもこの部屋には私達二人しか居ないのだけれど、内緒話みたいな、小さな声で沖田隊長は言う。
「…だ、から私は……、」
「分かってるよ」
…沖田隊長のことを、好きかどうかは分からない、と。そう言おうとした時、彼は、私の声を遮り続ける。「分かってるけど、」と。
「…フリでいいから、言ってみなせェ」
「な……、」
…沖田隊長はそう言うと、私をギュウッと抱き締めた。背中と後頭部に回されている大きな手。細身に見える彼だけれど、身体も筋肉がついていて、手も骨ばっていて、男の人だということを認識させられる。何も出来ないまま、何も考えられないまま、目を丸くさせてされるがままになっていれば、沖田隊長は呟く。
「……早く、」
「え…?」
聞き取れなくて、聞き返すと。
「…早く俺に惚れろよバカ」
…なんて。やっぱり、聞き返さなければよかったと、身体の熱を上げた感覚と共にそう思った。
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雨散 - 惚れ薬いいいいいいい!!!! (2019年8月5日 15時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - うおおおで爆笑しちゃったじゃないですかァ!!息が苦しかったですわぁー。 (2019年2月25日 21時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
月猫(プロフ) - 番外編、最高です!にやけが全く止まりませんww (2017年12月26日 14時) (レス) id: 84e6bcc189 (このIDを非表示/違反報告)
りん - 番外編だーヾ(´∀`*)ノ゚やったー+.ヽ(≧▽≦)ノ.+ 凄い嬉しいです!(心の中で飛び跳ねています笑)まさか番外編が出るなんて…もうドキドキでした!本編も更新頑張って下さい。 (2017年12月11日 23時) (レス) id: 01d5cac8e5 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ゆっくりノワールさん» 何より仕事です(笑)。兎に角彼女は仕事してほしいんです(笑)。多分明日続編出すので、またよろしくお願いします^^ 更新頑張ります! (2017年12月11日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年11月18日 19時