公認ナイト ページ29
なんだか少し嬉しそうに、いつもより柔らかく表情を綻ばせた沖田隊長。そんな珍しい表情を一瞬だけ私に見せたのだ。強さや、強がりや意地、そんなものがすべて剥がれ落ちたようなその表情。まるで、鎧を脱ぎ捨てたかのような。
「…どうした」
「…何が、ですか?」
「…苦しそうだけど」
と。沖田隊長は私の顔をじっと見つめた。さっきまでの綻んだ顔は今はもうないけれど、その表情を見た途端に、胸の奥が彼の言う通り苦しくなった。きゅう…ぅ……と音をたてて。私は誤魔化すように顔の前で手を振りながら、なんでもないです、と返した。
「そ、それより、陽太、陽太は何か言ってましたか?」
話を全力で逸らした感じがバレバレだろうか。それでも取り敢えず構わなかった。兎に角話題を変えなければ。沖田隊長は少し怪訝な表情を見せたものの、深く追求するつもりはないようで「あぁ」と。
「お前のこと、護ってくれってさ」
「…私のこと?」
「姉ちゃんを護ってくれって。自分が父ちゃんと母ちゃん護るからって」
俺に勇者の座を明け渡しやがった、と。
表情を変えず、ポーカーフェイスでそんなことを告げた沖田隊長。彼はどうやら、私の専属の勇者にそんな頼まれ事をされていたようで。それを聞いて、私はクスリと笑ってしまった。
「つー事で、俺ァ弟共に両親公認のナイトになった訳だ」
「な、ない…?」
ちょっと待ってくれ。公認ってなんの事だろうか。そんな質問をするよりも先に、沖田隊長は口を開く。ギシ、とベッドが軋む音も、同時に響いて。次の瞬間には、彼の端正な顔が私の目の前にあった。
「なぁ、していいかィ」
「な、にを」
「この距離でわかんねぇのかィ」
「ダメです!!」
ここ病院ですからね!?と訴えるも知ったことではないと蹴られてしまう。身を引いて抵抗しようとするも、ベッドの上ではそう上手く逃げることは出来ず、追い込まれてしまう。
「おき…」
「昨日は邪魔が入ったからねィ」
今回は我慢出来ねぇ、と。
そう言って彼は私の両頬に手を添えて。
される、と思って目を瞑ったその時。
何を思ったか彼は、私の頭に唐突な頭突きをおみまいした。
鈍い痛みを帯びたそこを手で押さえて「いた!!?」と叫んでしまう。
「この間の仕返しでィ、バーカ」
「子供ですか…!!怪我人にする事じゃないです!!」
涙目でそう言うも、彼はまたしたり顔で笑っていた。
…無駄にドキドキとしてしまう自分の心臓に、私は少し、戸惑ってしまったのだった。
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雨散 - 惚れ薬いいいいいいい!!!! (2019年8月5日 15時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - うおおおで爆笑しちゃったじゃないですかァ!!息が苦しかったですわぁー。 (2019年2月25日 21時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
月猫(プロフ) - 番外編、最高です!にやけが全く止まりませんww (2017年12月26日 14時) (レス) id: 84e6bcc189 (このIDを非表示/違反報告)
りん - 番外編だーヾ(´∀`*)ノ゚やったー+.ヽ(≧▽≦)ノ.+ 凄い嬉しいです!(心の中で飛び跳ねています笑)まさか番外編が出るなんて…もうドキドキでした!本編も更新頑張って下さい。 (2017年12月11日 23時) (レス) id: 01d5cac8e5 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ゆっくりノワールさん» 何より仕事です(笑)。兎に角彼女は仕事してほしいんです(笑)。多分明日続編出すので、またよろしくお願いします^^ 更新頑張ります! (2017年12月11日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年11月18日 19時