お別れ ページ22
Aside
「A、本当に大丈夫?」
「大丈夫だって」
事件から翌日。今日何度目かの会話をまた繰り返していた。病室には、ベッドに腰掛けた私と、陽太と両親と沖田隊長、局長に副長が居た。大人数なため、狭い個室では狭く感じる。旅行を終えて帰ってきた両親は、陽太のお迎えと、私のお見舞いにきてくれていた。心配そうに眉を下げながら、お母さんは「本当に?」と。
「これくらい大丈夫」
「陽太が無事で良かったが…」
お父さんも丸椅子に腰掛けては心配そうに呟く。まぁ、顔にも腕にも足にもぐるぐると包帯が痛々しく巻かれているから、無理もないのかもしれない。陽太に怪我がないのが不幸中の幸いだった。
「申し訳ありません…!我々がちゃんと見ていれば…」
局長は両親に頭を下げてしまっている。隣にいる副長も、沖田隊長も。皆が悪い訳じゃないのに。
「顔を上げてください…!皆さんが謝ることではないですし」
「陽太も、皆さんと居て楽しかったって。な、陽太」
お母さんが慌てて皆に言うと、お父さんがニコリと笑って陽太に聞く。陽太はうん!と大きく頷いて、三人に曇りなき笑顔を向けて「楽しかった!」と伝えた。三人はそれを聞いて、強ばらせていた表情を柔らかくしてくれた。それを見た私はホッと胸を撫で下ろした。このまましんみりお別れなのは、嫌だもの。
…そう。陽太はこれから両親と江戸の片隅にある実家に帰るのだ。
「A、ありがとうね、陽太のこと」
「ううん、久しぶりに会えて嬉しかったし」
私も楽しかった、と。そう言いながら、陽太の頭をポン、と撫でる。柔らかな髪がさらりとして、指通りがよくて心地いい。すると陽太は、ちょっとだけ寂しそうにして、でもふわりと笑ってくれた。
「僕も、お姉ちゃんに会えて嬉しかった!」
「そっかそっか〜!ふふ、ありがと〜」
ギューッと。陽太を抱き締めてあげれば、陽太も私の背中に手を回してギューッとしてくれる。そうして、私に顔を埋めて、少しだけ、一瞬だけ、鼻をすすった。泣いちゃうかな、と思ったけれどそんなことはなく。次に顔を上げた時には、変わらず可愛らしい笑顔であった。
「お姉ちゃん、これからもお仕事、頑張ってね!」
「うん、頑張る」
そう頷き合って、陽太は私から離れていく。寂しそうな顔をしながら。その小さな体温が離れていくことに私も寂しくなってしまって、ちょっとだけ泣きたくなってしまう。けれど、陽太が我慢しているんだからとなんとか堪えた。
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雨散 - 惚れ薬いいいいいいい!!!! (2019年8月5日 15時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - うおおおで爆笑しちゃったじゃないですかァ!!息が苦しかったですわぁー。 (2019年2月25日 21時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
月猫(プロフ) - 番外編、最高です!にやけが全く止まりませんww (2017年12月26日 14時) (レス) id: 84e6bcc189 (このIDを非表示/違反報告)
りん - 番外編だーヾ(´∀`*)ノ゚やったー+.ヽ(≧▽≦)ノ.+ 凄い嬉しいです!(心の中で飛び跳ねています笑)まさか番外編が出るなんて…もうドキドキでした!本編も更新頑張って下さい。 (2017年12月11日 23時) (レス) id: 01d5cac8e5 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ゆっくりノワールさん» 何より仕事です(笑)。兎に角彼女は仕事してほしいんです(笑)。多分明日続編出すので、またよろしくお願いします^^ 更新頑張ります! (2017年12月11日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年11月18日 19時