護れるのか ページ13
「……俺は、ビビってたんでィ」
「……え?」
…私が話の続きを促す前に、沖田隊長はそう切り出した。そうして彼の口から紡がれた言葉達は、みるみる私を疑問の渦へと巻き込んでいく。覚悟が足りていないのは自分だと言ったり、今度はビビってたと言ったり。聞けば聞くほどよく分からなくて、私は思考を巡らせていく。彼の言葉を理解するのはいつだって難しいけれど、今回はずば抜けてよくわからない。
沖田隊長が何に対して恐れているのかも分からないし、何より沖田隊長の覚悟が足りていないのだなんてことは、私には思えない。彼の中には固く、強固な覚悟がちゃんと存在していて、だからこそ真選組一番隊隊長として先陣切って戦場を潜り抜けられるのだ。
私も、きっと他の隊士さんも、沖田隊長にそんなことを思っている人は一人もいないのに。
「…どういうことですか…?」
私がそう問い掛けると、隊長は私の手をキュッ、とまた握って、その手を見つめながらに答えてくれる。
「……今まで、死ぬ覚悟も、生き抜く覚悟も、人を殺す覚悟もしてきた。何があろうと真選組として、剣を振れるように」
だが、と。沖田隊長は言う。顔はうつ向かせたまま、けれど、その目はこちらを見据えている。私のことを真っ直ぐに、見つめている。
「……まだ、足りねぇもんがあった」
「…それは…?」
「……護る覚悟」
…護る、覚悟。と。心の中でその言葉を繰り返した。なんだか重たく、強く響くようなその言葉は、心の中で呟くとなんだか酷くしっくりするような気がした。それはもしかしたら、私が真選組でいる理由だからかもしれない。大切なものを自分の手で護りたい。そんな思いと、同じなような気がした。
「…俺は……、戦場に立って、敵を粛清するために戦うことは出来るが……、護れるのかが、不安だった」
…沖田隊長と不安。なんだか反対言葉みたいだ、と思いながら、耳を傾ける。すると。
「…お前を」
「……ぇ…」
…沖田隊長は、そんな言葉を発したのだ。
「…お前を護れるのかが、不安だったんでィ」
「…私…?」
…私を、護れるのか。
「お前が戦場に立って、そんな場面になってもし、お前に何かがあったらって、んなことを考えたら、おっかなくて仕方なかった」
そんな時に俺は、お前を守り抜けるのか、胸張って言える気がしなかった、と。沖田隊長は口にした。その間、私の目を見つめて。私の手を、優しく包み込んで。
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雨散 - 惚れ薬いいいいいいい!!!! (2019年8月5日 15時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - うおおおで爆笑しちゃったじゃないですかァ!!息が苦しかったですわぁー。 (2019年2月25日 21時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
月猫(プロフ) - 番外編、最高です!にやけが全く止まりませんww (2017年12月26日 14時) (レス) id: 84e6bcc189 (このIDを非表示/違反報告)
りん - 番外編だーヾ(´∀`*)ノ゚やったー+.ヽ(≧▽≦)ノ.+ 凄い嬉しいです!(心の中で飛び跳ねています笑)まさか番外編が出るなんて…もうドキドキでした!本編も更新頑張って下さい。 (2017年12月11日 23時) (レス) id: 01d5cac8e5 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ゆっくりノワールさん» 何より仕事です(笑)。兎に角彼女は仕事してほしいんです(笑)。多分明日続編出すので、またよろしくお願いします^^ 更新頑張ります! (2017年12月11日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年11月18日 19時