涙 ページ2
…ギュウッ、と、沖田隊長は私を抱きしめた。ズキズキと痛む私の身体を包み込むように、彼の大きな腕が回されている。いつもより優しく、まるで割れ物を扱うかのような慎重さで。少しでも乱暴に触れたら壊れてしまうのだと言う風に。それでも強く、私を抱き寄せた。沖田隊長のにおいが私の鼻孔をくすぐってくる。
…ねぇ沖田隊長、どうして貴方は、そんなに震えているの?
「…A、」
「ッ…」
…どうしてそんな泣きそうな声で、私の名前を呼ぶの?
聞いたことのない沖田隊長の声に、胸が締め付けられる。キュウッ……と。そんな音をたてている。どうしてか、私の目からは涙が溢れてきて、私の頬を伝っていく。沖田隊長の隊服に、歪な染みが出来ていく。丸く見開いた目からはとめどなく涙が零れて、その染みは大きくなっていく。
…それでも、沖田隊長は私を離すことはしなかった。
「……バカ野郎」
「……ごめ、なさ…」
……このまま、終わってしまうのかと思っていた。
……もう、沖田隊長にも会えないまま、彼の言葉の返事を返すことが叶わないまま、命を落とすのだと。目の前に迫った銀色を、私を斬ろうとする銀色を見て、そう思ってしまった。
…それと同時に、どうしても、どうしようもなく、私は、彼に会いたいと思ってしまった。
……沖田隊長に、会いたいと。強く強く、望んでしまった。
……そうしたら、本当に、彼が目の前に現れてくれるものだから。どうしたって涙が溢れてしまったのだろう。彼の体温が私に伝わってきて、彼の声が聞こえてきて、涙は大粒になっていく。安心して、嬉しくって、仕方がなかった。
……痛む腕に鞭を打って、私は沖田隊長の隊服の裾を掴んだ。今にも力なく落ちてしまいそうな程だったけれど、確かに触れていた。その手を沖田隊長は、そっと片手で包み込んでくれる。私の震えを止めようとしているように、キュッと握られる。
「……こわかっ、た…」
……怖かった、怖かった怖かった。
一気にそんな感情が沸いてきた。小さく小さく、泣きながらそう呟けば、沖田隊長は「ん」と短く返事をして頷いてくれた。
「…も、護れないのかなって……ダメなのかなって、おもっ…て…」
……沖田隊長は、涙に濡れる私の顔を自身の胸板に埋めさせる。子供のように泣く私をあやすように、背中をポンポンと叩いている。「大丈夫だ」と、彼は私に伝える。
「……もう一人にゃさせねーよ」
……護ってやるよ、俺が、と。
そう言うと隊長は、一旦私から離れていった。
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雨散 - 惚れ薬いいいいいいい!!!! (2019年8月5日 15時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - うおおおで爆笑しちゃったじゃないですかァ!!息が苦しかったですわぁー。 (2019年2月25日 21時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
月猫(プロフ) - 番外編、最高です!にやけが全く止まりませんww (2017年12月26日 14時) (レス) id: 84e6bcc189 (このIDを非表示/違反報告)
りん - 番外編だーヾ(´∀`*)ノ゚やったー+.ヽ(≧▽≦)ノ.+ 凄い嬉しいです!(心の中で飛び跳ねています笑)まさか番外編が出るなんて…もうドキドキでした!本編も更新頑張って下さい。 (2017年12月11日 23時) (レス) id: 01d5cac8e5 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ゆっくりノワールさん» 何より仕事です(笑)。兎に角彼女は仕事してほしいんです(笑)。多分明日続編出すので、またよろしくお願いします^^ 更新頑張ります! (2017年12月11日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年11月18日 19時