勇気と強さ ページ8
彼らは使われていない図書準備室で昼食を食べる。これがいつもの日常だった。ホコリだらけの部屋は一週間かけたおかげで綺麗になり、生活できるようになっていた。
「そう言えば、神楽ちゃんいつも体育を休んでいますが、風邪ですか？」
そよの質問に沖田はぎくっとした。ついに来た。
神楽の方をちらりと向くが、神楽は一心にお弁当を見ていた。
すっと顔を上げると、
「ううん。私、日光にあんまり強くない体質アル。だから、外の体育は晴れの日は出れないアル。嫌いに、なっちゃったアルか？」
あくまで、明るく振る舞う。
なんでもないように。
「そんな訳ないじゃないですか！どんな神楽ちゃんでも友達ですよ」
「当たり前じゃない。神楽ちゃんは太陽みたいで私たちをいつも明るく照らしてくれてる。そんな神楽ちゃんに太陽が嫉妬しただけよ」
「そうなのか……チャイナさんの元気な姿が見られないのは残念だが……」
「辛かったら俺たちにも声かけろよ」
みんな笑顔で応援してくれている。
沖田は口パクで『ほらな 言った通り』と伝える。しかし、神楽の表情は暗いままだった。
「私、飲み物買ってくるアル。みんな、何が飲みたいアルか？」
「牛乳！」
「紅茶で」
「おしるこがいいわ」
「コーヒーで」
「りょーかいアル！」
神楽は彼らから逃げるようにして自販機に来た。
牛乳と紅茶とおしることコーヒーを買う。
さすがに四本一緒に持つのはキツい。
廊下を歩いていると、向かいから歩いてきた男子生徒とぶつかってしまった。
「あ、ゴメン！」
その衝撃でコーヒーが転がってしまった。
「大丈夫アル」
その時、誰かがコーヒーを拾ってくれた。
「あ。ありがとうアル」
「何やってんでィ。どんくせぇな」
「サド……」
コーヒーを拾ってくれたのは沖田だった。
「コーヒー落としちゃったアルな」
「いいんでさァ。どーせ土方さんのだろィ。で、なんでおめーはそんな悲しい顔してるんでさァ」
「だって、サド『大丈夫だ』って言ってくれたのに、私、結局余命があと一年だって言えなかったアル。私、弱いアル。もっと、もっと強くなりたいアル！」
「おめェはもう充分強えよ。自分が病気でも、笑って毎日過ごせてる。充分じゃねぇか。俺は女のおめェより弱ぇ。俺は憧れてたんだよ。地べた這いずり回っても生きるための根っこ生やしてるおめェが」
そう。僕たちは惹かれあっていたんだ。
ゆらゆらゆらゆら。外で散る桜のように、僕らの思いは揺れていた。
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作者名：なちょ | 作成日時：2018年10月15日 21時
