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白と赤 ページ24

「おっ、見てみろよ」

銀八が外を見て言った。
外は一面真っ白で、別の世界のようだった。

「キレイ……」

雪が、ふわふわと舞って灰色のコンクリートの道路を埋め尽くす。

「そろそろ、帰りましょうか」

片付けをし終わった後、

「ばいばい」

「また、明日ね」

と言って別れる。
いつ、離れてしまうか分からない。
消えてしまうか分からない。
そんな世界で「また」と言って希望を持つ。

「送ってくぜィ」

そう言って沖田はゆっくりと、神楽の歩幅に合わせて歩き出す。

いつの間にか、世界はこんなにも変わっていた。
灰色に見えた終わりのないビルの壁は、普通の光景を彩る。
忘れられた空たちをみんなが見上げている。
誰も入っていかない路地の花も、精一杯輝いている。
無表情の人々も、誰かが困っていたら助けてくれる。
冷たい視線も、暖かな眼差しで護ってくれる。
バカバカしいルールでも、正義を振りかざして生きていく。

あの頃、僕らの見ていた世界はもうない。
このモノクロの世界に色をつけてくれたのは、君だ。

僕らは初めて出会ったあの駅の前に座った。

「キレーアルね」

「そーだねィ」

ポツリ、と呟いた。
それ以外の言葉が出てこなかった。
ただ、普通に、彼女は美しかった。
雪を乗せた桃色の髪は幻想的だった。
彼女と、目が合う。

_______________あ

あった。
ここに、あったんだ。ずっと欲しかった物が。
全てがそこにはあった。
地球が、彼女の瞳にあった。

「好きだ、神楽」

たったこれだけ。
これが、今俺が送れる最高の言葉。
彼女は、黙った。
口を開くと、言葉の代わりに赤い何かが出てくる。
それは、ポタリ、ポタリと白に斑点を作る。

「チャイナ!!」

失う怖さをもう、知ってた筈なのに。
名前を呼んじゃダメなのに。
彼女は降り積もった雪のように崩れ落ちた。

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作者名:なちょ | 作成日時:2018年10月15日 21時

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