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「大丈夫?派手に転けてたけど」
転んだ黒い衣服に身を包んだ女の子に手を差し伸べながら近づいた。
「お、"鬼"っ」
「あ”?」
「ヒイイッ」と女の子は足をもたつかせながら、這いつくばりながら自分から逃げていく。
「なんで僕が鬼なの?角は生えてないよ?」
「ヒッ、逃げ、に、逃げな、きゃ、はや、く、はやっ、く」
「あのー、質問に答えなきゃ喰うよ?」
ピタッと動きが止まった。
「目が、目、目が」
這いつくばりながら女の子は逃げる。
「うーん、"血鬼術で自分の目を人間にした"はずなのに?なんで、なんで?」
早歩きで這いつくばった女の子の逃げ道を走って、女の子の前に座った。
「なんで、分かったの?」
座りながら顔を覗きこむと女の子は泣いた。
「わ、わったし、ま、ま、わりより、"目にたくさんの色を感じれて"っ、そ、それで...」
「えっ、なにそれ、すっごーい!」
パチパチと女の子に拍手を送った。
「...じゃあ鬼になる?」
再び女の子の顔を覗きこんだ。
「鬼として生きるか、それとも死ぬか」
ポンポンと女の子の頭を撫でると、女の子はまた泣いた。
「生き、生きた、い」
女の子が"生きたい"と選択した瞬間、ポロリと懐から"ナニカに包まれた布"が落ちた。
「中開けていい?」
女の子は静かに首を縦にふった。
「コレって...」
中から出てきたものは、
"蝶々のように飾りがついた櫛"だった。
「綺麗、綺麗、綺麗だあーっ!」
うっすらと雲から出てくる月明かりに照らせばキラキラと蝶々の髪飾りは輝く。
「蝶みたいに何色も、何色も、いっぱい、いっぱい、キラキラしてる!」
櫛を片手に月を見ながら言う。
「でもさ、駄目だよ」
女の子の触れている地面から黒いモヤが出て、手がたくさん女の子に触れる。
「手がたく、さ、さん」
女の子からは焦った声が聞こえる。
「"他人に生殺与奪の権を握らせる"のは
"駄目"だって柱に教えて貰わなかった?」
キラキラと角度を変えて櫛を月明かりに当てる。綺麗さにうっとり、また、角度を変えて月明かりに当てる。
「ひ、引きずりこま、れ、れ、る、るう」
「女の子のお肉は、あんま食べないから、久しぶりだなあ、しかも"鬼殺隊"だから嬉しいなあ!」
「や、やだ、死ぬ、のは、い、や、だ」
女の子は黒い渦に飲まれていく。
「蟲柱のお肉食べてみたいなあ...うーん、水柱もいいかなあ...?迷っちゃうなあ...」
鼻歌まじりのスキップで馬車に戻った。
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作者名:幽銀 | 作成日時:2019年12月15日 11時