君がいない明日には#2【3年A組】【柊一颯】

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少し暴走気味の私を止めてくれたのは先生じゃなくて、今度は真壁君。落ち着いてきた頃にお礼をいえば、良いんだ。なんて優しい声。まだ授業は続いている。私が落ち着いたことを確認すると、先生が里見君に語りかけた

「景山とお前の間になにがあったのかはこの際どうでもいい！！！俺が知りたいのはひとつだけだ！お前は、本当に景山が苦しむ姿を見たかったのか？それが！！お前の、明日を生きる活力になったのか！？」

「……活力ってなんだよ……」

面倒くさそうに反抗する彼に、先生は何も言わなかった。その代わり聞かしてくれたのはある刑事さんのお話。

「…ある刑事の話をしよう。その男は、かつて教師だった。｣

《これって……》

携帯から流れたのは郡司さん以外の声。多分部下の警察関係者のひとだろう。この言葉で先生の話す刑事が誰の事か何となく分かってしまった。

｢生徒一人一人と、真摯に向き合うような。強い心根を持って欲しくて、時には体罰も厭わないその教育は、非難の声も上がったが、改心する生徒は、大勢いた。｣

明日を生きる活力。誰しもが持っているものだけれども、それを意識して持っている人はめったに居ない。自分の持つ、自分だけの明日を生きる活力を見つけられたら、それは明日への希望の橋になる。

｢でもある日、一人の生徒が集団暴行を受けて、亡くなった。加害者は他校の生徒だった。男は教え子を救えなかった自分を責めたが、その怒りと、悲しみを犯罪そのものに向けた！弱者を傷つける犯罪を横行しない世の中にする！！……そして男は、刑事になった。｣

郡司さんも先生と同じ様な先を見すえることの出来る人間だ。目先のことだけに捕われず、それの原因を見つめ、解決に務める。目指すものは同じなのに、対極に立つ二人

｢その男は、自分が味わった負の感情を跳ね返して、
明日を生きる活力に変えたんだ！！」

二人とも自分の思う正しいやり方で戦っているから、譲れないし譲るつもりもない。

「ここにいる二人もそうだ。真壁は、自分が選手として復帰出来なくなったときに、相手を憎むのではなく仲間をサポートする道を選んだ。熊沢だって、本当は景山に対して複雑な思いを抱いていた筈だ。だけど、彼女に勝とうと努力をして、負の感情を跳ねかえした｣

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