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意識がはっきりしてきた時には、もう別の場所にいた。



見渡すと、水を加えていない赤と黒の絵の具を半端に練り混ぜたような場所だった。



濃い甘い香りが鼻をつく。


足下にはくるぶしまでの濁った水。




そこに存在するだけでも気が滅入ってしまうような場所だった。




隠すって、もしかしてここに?




もしかして、ここが目の赤い三日月宗近の現状?



私はばしゃばしゃと水を蹴りながら歩く。



たぶん私精神だけの状態だし、走ってみようかな。



見渡す限り水と赤黒い空か天井か、その境目は見えなかった。



何が言いたいかって、たぶんここはずっと一緒の風景。



永遠にこのままだと嫌だななんて思うけど、実際否定できないから怖い。




薬研さん、大丈夫かな。



赤黒い色を見上げる。



もう、手遅れなんだろうか。


真っ黒に染まってないからまだいけるなんて思ってしまう私は馬鹿なのだろうか。




別に堕ちてしまった神様なんてただ危険で強敵としか思ってないから。



関わらなかったら別にそのままでいいんだ。




とりあえずな言い訳文をつらつらと頭の中に浮かべる。




どうして私はこうもお節介なんだ。



苦笑しながら頭を掻く。



お人好して言われたいだけだ。きっと。



表情が消えて、無意識に手をあげる。



あの色に手が届いたら、どうにかできないかな。



指の先にも力を入れて、届け届けと。



なに馬鹿なことを。そう思って腕を下ろそうとしたときだった。



例えるとしたら、ドライアイスから出るもわもわに手のひらを突っ込んだような、なんとも言えない感覚。


だけど、思った以上に赤黒いそれ(・・)は、近く、軽かった。



どろどろとして重い。遠すぎて届きはしない。そんなの思い込みでしかなかった。




指は赤黒い霧ようなものをぐちゃぐちゃに引き伸ばし、薄くしていった。



単純なゲームみたいで楽しくなる。



すると、急にざらりとした感触が指の先に。



驚いたが、好奇心と精神だけというのが後押しし、なんだか固くなった赤黒いものを触った。



歩きながら腕をあげ、固いものを触る。



これといって変化はないが、少しずつぱらぱらと破片が落ちてきた。



注意して見ると、破片はだんだん大きくなっている。



不思議には思わず進んでいくと、何かが見えた。



目を凝らす。




見えて、驚いた。



そこにいたのは、涙を流す三日月宗近だった。




後退りながらも私の目は、濡れた目を凝視する。




音はないこの場所。



大きな破片が落ちようとしている現状など、知るよしもなかった。

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ニャンコソバ2(プロフ) - 若葉さん» うわぁあ!!まだ見てくださってた方が…!!ありがとうございます頑張れます…!! (2020年11月8日 10時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - 更新待ってます! (2020年11月8日 1時) (レス) id: 5ef262c096 (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ2(プロフ) - 幸別愛友さん» ありがとうございますー!!!これからもどうぞよろしくお願いします!! (2019年12月14日 6時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - この世界観すごく好きです!続きがすごく楽しみです!待ってます!! (2019年11月12日 23時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ2(プロフ) - さらさん» うわぁあありがとうございます!!!!!オチは悩み中です…。いきあたりばったりで書いてる駄作者なので…。 これからも応援よろしくお願いしますっっっ (2019年11月5日 22時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ニャンコソバ | 作成日時:2018年12月31日 17時

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