〜3〜 ページ4
――“誕生日”。
私はいつ、彼に自分の生まれた日を教えただろうか。そもそも、私はこの世界で自分の誕生日を教えたところで月日が伝わると思えない。それに、“誕生日”は自分にとって忌まわしき日のひとつ。自分自身を好きでないから。その為、誕生日の話は一切しなかった。
なのに彼――紅覇は先刻、私の誕生日を祝ったのだ。
「えっと…私、いつ紅覇に誕生日教えたっけ?」
疑問を口にすると、紅覇は微笑んだまま、
「ううん、Aが“こっち”に来てもうすぐで一年経つでしょ?Aの世界と日付、若しかしたら違うかもって思って。だから、Aと出逢って一周年の今日を誕生日に――…A?」
「……」
Aは俯いて、今一度思考を巡らせた。
『“こっち”に来てもうすぐで一年経つ』
「…“一年”?」
「う、うん。あれ、僕若しかして間違ってた?」
間違ってる。そう思いたい。然し「8ヵ月」と「1年」をそうそう間違えることがあるだろうか。否、ない。
Aは以前から察していた。自分がこの世界に来たことで、徐々に時間軸にずれが生じ始めていることを。そのずれはとうとう「4ヵ月」もの差をつけていた。自分の気付かぬうちに。
「……ううん、間違ってない」
Aは首を横に振り、唇に弧を描いた。
「だよね!」
「うん。ああそっか、もう一年もここに居たんだ。実感湧かないな」
それもそうだ。そんなに居ないんだから。
「ふふ、そうだねぇ。なんだか、Aと出逢ったのが昨日の事のように感じるよ。それにしても、“誕生日”くらい一緒に居たかったな。何か贈り物とかもしたかったし」
紅覇は唇を尖らせて小さくため息を吐いた。Aはふふっと一笑する。
「そうだね…。でも、大丈夫だよ。今こうして一緒に話をしているだけで、最高のプレゼントになるから」
なんだか複雑な気持ちだ。祝われることは当然嬉しい。家族以外の人に自分の生まれた日を祝ってもらった事なんてない。が、自分の本来の誕生日でもなければ、紅覇の言う“誕生日”でもないのだから。
もし、自分がこの世界から消えれば時間軸は元に戻るのだろうか。皆 原作のように事が進むだろうか。私はこの世界での思い出を覚えていられるのだろうか。
(私が消えれば――――…)
紅覇は白い歯を見せて柔らかく微笑み、Aは頭上の残月夜を仰ぐ。
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紅妃(プロフ) - 睦月サイハさん» コメント有難う御座います！ここのところ更新してなくて本当に申し訳ありません。わたくしめには勿体ないお言葉を頂けて、本当に嬉しい限りです。そろそろ話が進むので、気長に待っていただければ幸いです！ (2017年10月12日 0時) (
レス) id: d4608e4b4b (このIDを非表示/違反報告)
睦月サイハ - あの、更新頑張ってください！とても面白いし、続きが気になります！ゆっくりで良いので頑張ってください！応援しています！ (2017年10月11日 23時) (レス) id: 78af19d42e (このIDを非表示/違反報告)
紅妃(プロフ) - ゆみさん» 最新話の感想コメント有難う御座います！やっと今まで書きたいところを書けたので、読者様にもそう言っていただけてとても嬉しい限りです！みんなが無事でいられることを私も祈ります… (2017年7月8日 16時) (レス) id: d4608e4b4b (このIDを非表示/違反報告)
ゆみ - シェルの正体は何者でしょうか 続き気になります 何かたくらんでいるのはあきらか みんな気をつけて (2017年7月8日 13時) (携帯から) (レス) id: a64fcc18a2 (このIDを非表示/違反報告)
紅妃(プロフ) - ゆきさん» 感想コメ有難う御座います!そう言っていただけるなんて光栄です、頑張ります!!；；；； (2017年5月25日 8時) (レス) id: d4608e4b4b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅妃 | 作成日時：2016年12月6日 1時
