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11.大寝坊 ページ11

プルルルル、プルルルル……



「うるさい、なぁ……」



無機質な機械音に顔を顰める。
なんだ、せっかく人が気持ちよく寝ていたのに。

機械音の出所を漁れば、私のスマホ。
しかしいつもと違い、小さなスクリーンには見慣れた目覚ましの表示はなく、朔からの着信画面だった。

おぉ……電話なんて珍しい。

回りきらない頭で、応答ボタンをタップする。



「もしもし、A!もう講義始まるけど!何してん?!」

「………はぇ?」



我ながら間抜けな声だ。
朔の声に体を起こして時計を見る。時刻は朝の9時前。

因みに1限から講義がある場合、起きるのは6時半。家を出るのは8時だ。

つまりは…………、



「ごめん大寝坊した」

「でしょうね!」

「昨日の化粧もそのままに、行き倒れて寝てた」

「マジで何してんの……」



電話越しに呆れる朔の声にちょっとだけ安心する。
「2限には着く」と伝えて、1限はパスすることにした。



いやまさか、15時くらいに寝て起きたのが朝の9時前とは。
誰がそんなこと思うだろうか。

本来なら電話があった時点で覚醒して飛び起きるべきなんだろうけど、寝過ぎたが故に身体が重い。



シャワーを浴びて、着替えて、また化粧をして、着ていた物を洗濯機にぶち込んでおく。
私は基本家事は後回しで、自炊もほぼしない。
家事も料理もできるにはできるが、自分のことなんだからと適当になってしまいがちだ。

……流石に朔が遊びに来たりするから部屋そのものは綺麗だ。



リビングに佇む大きな本棚には、びっしりと難しい資料や教材が並べられており、ここだけ見ればとても頭のいい人に見えるかもしれない。

鞄に必要な資料を放り込み、家を出ようとして、固まる。



そうだ。ストーカー、大丈夫かな。

昨日の焦った勢いで置かれた椅子や、がっちりロックされている扉を見て、またあの音を思い出す。



「…………大丈夫、大丈夫」



わざと声に出して自分を宥め、そっと家を出る。
うん、戸締りもばっちりだ。



この動揺が周りの人に気づかれないように、大学までの道のりをいつもより急いで歩いた。

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作者名:tokumei | 作成日時:2023年8月21日 13時

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