輝くダイヤと優しい日々

Valentine's-Day Ki ページ5

「あー兄ちゃん、もっと右！」


おっちゃん、簡単に言うけどなぁ、

上に行くほど、枝細いんだよ。


騒ぎに駆け付けた俺は、

今、木登り中だ。


子供の頃は、よく木登りしたけど、

大人になってする木登りは、

結構スリル満点だ。


ミー、ミー。


もう少しで手が届きそうなのに、

人間が怖いのか、

落ちるのが怖いからか、

うっかり木登りしちゃった子猫が、

さっきから、俺の手を避ける様に、

枝から枝へ移動してしまう。


たまに吹く北風がドンドン体温を奪っていく。


子猫もガタガタと身体を震わせている。


「お前の親はどこ行ったんだよ〜」


情けなく呟きが漏れる。


「おーい、兄ちゃん、暗くなる前になんとかしないと、体力なくなるぞー。」


ハシゴを持ってきてくれた、

近所のおっちゃんが、

さっきから、まぁうるさい。


よっしゃ、もうなるようになれだ！


思い切り、身体を伸ばし、

右腕を幹に引っ掛け、左足を割と太めの枝に乗せ、

左手を子猫に伸ばした。


避けられそうになって、

慌てて胴体を掴んだ。


きゃーーーっ！


その場にいた数人の主婦とその子供たちの悲鳴。


右腕を引っ掛けていたおかけで、

足を踏み外したものの、

なんとか身を立て直すことが出来た。


「兄ちゃん、やったなー！」


ひとり呑気なおっちゃんの声に、

どっと溢れ出た冷や汗が一気に冷された。


「さぶっ！」


身震いひとつして、

上着の中に子猫を入れ、

慎重に下へ降りた。


「で、この子猫の飼い主って？」


シーン


「ん？兄ちゃんの猫じゃなかったのか？」


どうやら、


俺は厄介なものを助けてしまったらしい…


「助けたよしみだ、兄ちゃん飼ったらどうだい？」


ペット可だけどさ、


藤ヶ谷、猫、大丈夫かなぁ…。


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