輝くダイヤと優しい日々

あけぼっち F ページ19

御節みたいな手の込んだものは作れないから、

あいつの好きな物をパパッと作れるように、

下準備だけし終わったところで、

ふと気になった。


年をまたいだ時、

あけおめスタンプは送っておいたけど、

直接は言ってないから、

おかえりよりも先にあけましておめでとうって

言うべきかなぁ…


起きた時のままになっていた乱れたシーツや

布団を綺麗に整えながら、

頭の中でシュミレーションしてみる。


多分、いつもみたいに、勢いよくドア開けて、

一直線にリビングまでやってくるよな、

そこで「あけましておめでとう！」

うーん、やっぱ、なんか変だな。

「おかえり、あけましておめでとう。」

のが自然かな？


でも、なんか足りない気が…

あ、そうか！

「おかえり、あけましておめでとう、

今年もよろしくお願いします！」

これが正解だな。


あ、いや、なんか重いかも。

今年も何があっても離れないからなって

宣言してるみたいじゃん。


もっとライトな感じが良いな、

「おかえり、あけましておめでとう、

とりあえず今年もよろしく。」

うん、これだな。


ピンポーン


ベッドを整え終えた頃、鳴ったインターフォン。

こんな元日の昼に誰だろ？

宅配便とかって元日もしてたっけ？

待たせてしまっては悪いと、

駆け足で玄関へ。


「あーけーてー。」


聞こえてきたのは、俺の待ち人だった。


「は、はい！」


インターフォン鳴らすなんて珍しいと思いながら、
慌てて鍵を開けた。

鍵を開けてもドアノブが動かない。


北「手ー塞がってんの、あけてー。」


「え？ごめん！」


ドアを開ければ、足を引っ掛け広げ、

雪崩込むように玄関に飛び込んできた。


北「ほい、これ、あと、だだいま。」


俺の手に細長い紙袋を渡し、

頬にキスしてきた。


「これ、ワイン？」


北「お前の好きそうな甘めのワイン、

それから、今年もよろしくな♪」


上目遣いで左の口角を上げ、にやりと笑い、

今度は唇を重ねてきた。


北「お前は、言わねぇの？」


「あ、あけましておめでとう、

こちらこそ…お願いします。」


北「よく出来ました！んじゃ、俺、シャワーしてくるわ。」


満足そうな笑みを浮かべ

これもよろしくと、缶ビールの入った袋も渡し、

バスルームに直行してしまった。


全て、俺の想像の斜め上をいかれ、

「まぁ、そんなもんだよな。」

と両手を塞いだ荷物を見て笑った。


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