【wrwrd!】ダンガンロンパ Last〜ボクらのカンキンユートピア〜Part9

CHAPTER 05 総統が恐れるは破滅より孤独 ページ36

「ゾムさん、流石にそれは…」

エーミールくんが止めに入った。
しかしゾムくんはグルちゃんの胸ぐらを掴んだまま手を離さない。

「…殴るだけか？本当は俺のこと殺したいんだろ？殺せよ、お前のナイフは飾りじゃないだろ」
「………」

殴られたにもかかわらず、痛がる素振りも見せないグルちゃん。
彼はまるで、ゾムくんの殺意を煽って殺し合いを起こそうとしているようだ。
…そんなことしても殺されそうなのはグルちゃんだが。

「ゾムくん、あんなの気にしなくていいから」
「っ…わかっとる」

私がナイフを握っている方の腕に軽く触れると、ゾムくんは掴んでいた胸ぐらを振り払うようにして離す。
ゾムくんの手から逃れられた途端、グルちゃんは襟とネクタイを直した。
殴られた頬がじんわり赤くなり、痛そうなのが分かったが、誰も彼に手を差し伸べようとはしない。

「Aがいて助かったな、ゾム」

グルちゃんはそう言いながら、痛々しい頬を拭う。
私とショッピくんは、ナイフを握り直そうとするゾムくんをグルちゃんから遠ざけた。
するとグルちゃんはそんな私たちを鼻で笑い、何も言わずに食堂を後にした。
彼の背中が見えなくなってから、私たち三人は深い溜息をつく。



「……ごめん、グルッペンのこと殴ってもうた」

グルちゃんがいなくなり、謝ってきたゾムくんの声はいつも通りの冷静さを取り戻したものだった。
さっきまでの荒々しい彼は何処に行ったのか、私とエーミールくんは顔を見合わせる。

「気にすることないって、あの人が敵ってことはハッキリ分かった訳やし」

エーミールくんはそう言うと、落ち込んでいるゾムくんの肩を軽く叩いた。
内通者だと分かった以上、彼を仲間として接する必要もない。
ショッピくんも「そうですよ」とエーミールくんの言葉に同意する。

「いや、流石に取り乱しすぎた…元々殺すつもりもなかったのに、アイツの話聞いてるとムカついてきて」

そう言いながらゾムくんはナイフを仕舞う。
内通者をカミングアウトされた上に、こちらの味方になるつもりはないと言われたのだ。
ゾムくんが平静さを失ってしまうのも仕方がないだろう。


「でもこれで疑心暗鬼もなくなったな、ここの四人は信用できるってことやろ？」
「グルちゃんが名乗り出てくれて助かったね」

結局、どうして彼が内通者であると名乗り出たのかは分からないままだが。
早いうちに内通者が判明したことで、茶番ちゃんからの情報は動機としての意味をなさなくなった。

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