047 ハレバレバイバイ。 ページ47
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今日の天気は晴れだった。
改めて、神様というものは意地悪だと感じた。
雲一つない晴天の空は私には似つかわしくなくて、
この世の全てが私を責めているようにさえ感じられた。
この判断が本当に正しいのか分からない。
だけど“私だけ”を映さない貴方を見ているよりも、
いちファンとして貴方を遠くで応援している方が幸せになれる気がした。
時計の針は止まる事無く終わりの時間を刻んでいた。
校内にチャイムが響き渡る。
ホームルームを終えて、手早く荷物を後にした私は廊下をゆっくり歩いていた。
廊下の窓から見える空は広く、大きくて、
この場所から飛び降りれば今にも飛び立てるような気さえした。
「A」
ぼんやりと薄赤く染まる空を見上げる私の意識を静かな声が引き戻す。
廊下の先には赤い瞳が二つ、佇んでいた。
「凛月」
私がその名を呼ぶと、赤い瞳は優しく緩められた。
「丁度良かった、渡したいものがあったから」
そう言って凛月の手が私の手を取る。
生気が失われたようなひんやりとした手のひらに包み込まれて反射的に体がびくりと揺れた。
それと同時に手のひらに小さなハコの様な感触と重みが触れる。
「これ、お守り」
手に握らされたものを見て私は少しだけ心臓が脈打つのを感じた。
「……大丈夫だから
Aはもう“自分の”幸せを見つけていいよ」
そう呟いた凛月の赤い瞳が小さく揺れている事に気付いてしまった。
きっと凛月は分かっているのかもしれない。
私が凛月に言葉を返す前に凛月は私の隣をすり抜けて行った。
優しい凛月の気持ちが痛かった。
心に一生取れることのない小さな針が沢山刺さった様に感じられた。
手の中の小さなハコを握り直し今度はただ真っすぐ前だけを見て足を進める。
一歩進む度に終わりが近付いて行く様で体が震えた。
だけど足を止める事だけはしなかった。
全て元に戻るだけ。
何も無かったあの頃に戻るだけ。
屋上に続く廊下が少しずつ濃く赤く染まる。
屋上への扉へ辿り着き、私は深呼吸をして心を落ち着けた。
ぐっとドアノブを握る。
耳障りで不愉快な錆びた音を響かせながら扉は簡単に開いた。
扉の隙間から流れ込んだ柔らかな風が私の頬を優しく撫でた。
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とまと。(プロフ) - はるなさん» そう言って頂ける方と出会う事が出来、感無量です…!私には勿体無い言葉の数々を有難うございます、最後までお付き合いして頂けると嬉しいです。 (2017年5月9日 22時) (レス) id: 5b7907730c (このIDを非表示/違反報告)
とまと。(プロフ) - 聖泉さん» そんな嬉しい言葉を掛けて頂いたのは初めてです…!最後まで感動して頂けるように頑張ります。 (2017年5月9日 22時) (レス) id: 5b7907730c (このIDを非表示/違反報告)
はるな(プロフ) - この物語、本当に好きです!このお話と出会えて良かった!続き楽しみにしています。頑張ってください!! (2017年5月8日 23時) (レス) id: 651f5172c0 (このIDを非表示/違反報告)
聖泉 - とまと。さん» 感動しました。このお話を読んでいてよかったです(^^) (2017年5月7日 23時) (レス) id: b0c24886c2 (このIDを非表示/違反報告)
とまと。(プロフ) - 聖泉さん» まだまだ完結まで時間の掛かる2人ですがゆっくり温かい目で見てあげてください…!応援有難うございます(*^^*) (2017年4月15日 14時) (レス) id: efe978ed57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えはら | 作成日時:2016年12月7日 19時