042 参謀、その懐中。 ページ42
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全部計算した上だった。
Aとセッちゃんが最近余り上手くいっていない事も気付いていた。
セッちゃんが無意識にAを傷付けている事も。
Aがセッちゃんに不満を持っている事も。
全部知っていた。
Aが我慢している事も。
もう限界な程、泣いてしまう程苦しんでいる事も。
あの日壊れかけたKnightsを繋いでくれたのはAだった。
自分が傷付いても、それでも俺達が創り上げたものを、
俺達と同じくらい大切にしてくれた。
Aは俺を幸せにしてくれた。
だから今度はAに幸せになって欲しい。
Aが苦しんでいる姿は見たくない。
笑っている顔を見せて欲しい。
例えその為にAがKnightsから離れてしまっても、
Aがまた前みたいに笑ってくれるならそれで良かった。
「……でも、ちょっと計算外だったかも」
まさか逃げ出すとは思わなかった。
背を向ける時に見えたAは傷付いた顔をしていた。
……王さまなら、もっと上手く言葉に出来たのかな。
俺は人の些細な機微に敏感な方ではない。
幼い頃、良かれと思って言った言葉が無神経な言葉で相手を傷付けてしまう事もよくあった。
王さまなら何て言ったのかな。
セッちゃんを怒ったのかな、
それともAに我慢しなくていいって諭した?
自信満々な顔で笑って大丈夫だ、なんて呑気な事を言ったかもしれない。
昔のKnightsを慈しむ様に目を閉じていると独特な声が聞こえた。
「くまくん、Aは?」
「セッちゃん」
練習着に着替えたセッちゃんが片手を腰に当て、立っていた。
「他のプロデューサーの仕事があるんだって」
「他の仕事ぉ?そんなの聞いてないんだけどぉ
全く、連絡くらい寄越しなよねぇ……」
怪訝そうな顔を浮かべてぶつぶつと小言を垂れるセッちゃんの姿に俺は少しだけ呆れた。
自分の彼女の顔色が悪い事にも気付かない程Aを映してないくせに、セッちゃんは自分の事ばっかりだ。
「……セッちゃんは何も分かってないよねぇ」
不意に、そんな言葉が出てきていた。
少しだけ嘲笑する様な雰囲気を含んで。
「……何、どういう事?」
ムッとしたセッちゃんの鋭い眼光が俺に向く。
「……別に、練習しよっか」
その視線をさらりと受け流して俺はセッちゃんの隣をすり抜けた。
窓を叩く雨は少しずつ強くなっていた。
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とまと。(プロフ) - はるなさん» そう言って頂ける方と出会う事が出来、感無量です…!私には勿体無い言葉の数々を有難うございます、最後までお付き合いして頂けると嬉しいです。 (2017年5月9日 22時) (レス) id: 5b7907730c (このIDを非表示/違反報告)
とまと。(プロフ) - 聖泉さん» そんな嬉しい言葉を掛けて頂いたのは初めてです…!最後まで感動して頂けるように頑張ります。 (2017年5月9日 22時) (レス) id: 5b7907730c (このIDを非表示/違反報告)
はるな(プロフ) - この物語、本当に好きです!このお話と出会えて良かった!続き楽しみにしています。頑張ってください!! (2017年5月8日 23時) (レス) id: 651f5172c0 (このIDを非表示/違反報告)
聖泉 - とまと。さん» 感動しました。このお話を読んでいてよかったです(^^) (2017年5月7日 23時) (レス) id: b0c24886c2 (このIDを非表示/違反報告)
とまと。(プロフ) - 聖泉さん» まだまだ完結まで時間の掛かる2人ですがゆっくり温かい目で見てあげてください…!応援有難うございます(*^^*) (2017年4月15日 14時) (レス) id: efe978ed57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えはら | 作成日時:2016年12月7日 19時