036 さよならカウントダウン。 ページ36
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それから私達は少しずつ恋人らしくなっていった。
お互いの気持ちが通じ合った次の日は2人とも顔を合わせるだけで頬を赤く染めていた。
お互いらしくないくらいぎこちなくて、レッスンの時には流石に凛月が理由を尋ねてきた。
「くまくん、報告があるんだけど」
凛月の「どうしたの2人とも」という問いには答えず、
泉は私の腕を引っ張り横に並ばせる。
「……俺達、付き合う事になったから」
見上げた泉の顔が真っ直ぐな瞳をしていて、思わず私はときめいてしまった。
一方で凛月は普段と何一つ変わらぬ表情で
「……ふーん、そんな事だろうとは思ってたけどね」
と、ただそれだけを呟いた。
「……え、凛月、驚かないの……?」
「別に、2人の気持ちは見ててバレバレだったし、
むしろやっとかって感じかなぁ」
ふふ、と少し含みのある笑みで薄く笑う凛月に泉は「くまくんってホント可愛くないよねぇ」なんて言ってたっけ。
だけど私は気付いていた。
凛月が一瞬だけ私の方に柔らかい笑みを向けたって事に。
その笑みがレオと重なって見えて「セッちゃんをよろしくね」と言っている様に感じられて少しだけ涙が滲んだ。
時間が過ぎていく程に私達のぎこちなさは薄れていった。
気が付けば付き合う前の様な、軽口を言い合える様な関係にまで戻っていた。
だけどあの頃と違うのは泉の温もりを側で感じられる様になった事。
手を繋いだ温もりも、
柔らかな唇の温もりも、
ずっと届かないと思っていた泉が私のすぐ隣に居た。
私がずっと欲しかったものが手の届く場所にあるという事が嬉しかった。
泉の青い瞳に映し出された私の姿を見る度に胸の奥は幸せで満ちていった。
繋いだ手のひらから伝わる貴方の体温が私に愛しさを教えてくれた。
絡めた長い指も。
そっと重ねた薄い唇も。
長い睫毛の下で揺れる瞳も。
全部私だけが知っていた。
胸を締め付ける甘くて幸せなこの気持ちが、
ずっと笑っていられた幸せなこの時間が、
この先もずっとずっと続いて行くのだと信じていた。
――それなのに。
私は幸せだった。
幸せ『だった』筈なのに。
どうして私は
『ごめんね、泉』
どうして私達は
『もう別れたい』
こんな風になってしまったの。
『さよなら、泉』
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とまと。(プロフ) - はるなさん» そう言って頂ける方と出会う事が出来、感無量です…!私には勿体無い言葉の数々を有難うございます、最後までお付き合いして頂けると嬉しいです。 (2017年5月9日 22時) (レス) id: 5b7907730c (このIDを非表示/違反報告)
とまと。(プロフ) - 聖泉さん» そんな嬉しい言葉を掛けて頂いたのは初めてです…!最後まで感動して頂けるように頑張ります。 (2017年5月9日 22時) (レス) id: 5b7907730c (このIDを非表示/違反報告)
はるな(プロフ) - この物語、本当に好きです!このお話と出会えて良かった!続き楽しみにしています。頑張ってください!! (2017年5月8日 23時) (レス) id: 651f5172c0 (このIDを非表示/違反報告)
聖泉 - とまと。さん» 感動しました。このお話を読んでいてよかったです(^^) (2017年5月7日 23時) (レス) id: b0c24886c2 (このIDを非表示/違反報告)
とまと。(プロフ) - 聖泉さん» まだまだ完結まで時間の掛かる2人ですがゆっくり温かい目で見てあげてください…!応援有難うございます(*^^*) (2017年4月15日 14時) (レス) id: efe978ed57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えはら | 作成日時:2016年12月7日 19時