【オリジナル】たいせつなひと (ページ9)

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卒業式を終え、自由時間になった

無事、ともいえないが

今までで一番満足のいく演奏ができた

彼は宣言通り、全てを私にあわせてくれた

不安はあった

でも、怖くはなかった

不思議と、彼とならどうにかなる

彼となら、きっと大丈夫

彼なら、私の音楽を理解してくれる

何の根拠もないけれど、

うまくいかない理由も浮かばなかったから、

きっと、成功する

私たちはそんな、少し強気な心意気で望んだ

先生方や、たくさんの親御さんが私に話しかけてくれた

ピアノ上手だった

感動したよ！

今度はソロが聞きたい

今まで一度も貰うことのなかった言葉は

強く私の心に刺さった

「Aちゃん」

彼と、彼の母親が私の元にきてくれた

「おつかれ！

俺、びっくりしたわ

歌に合わせるより、Aちゃんのピアノに

合わせる方がよっぽど楽だった

写真撮ろう！」

きっと彼がいなければ途中で挫けていただろう

彼が指揮者でなければ、自分の音楽はできなかっただろう

彼が優しくなければ、私は大切なことに気づけなかっただろう

今の私は彼が作ってくれたと言っても過言ではない

「ありがとう」

「え？どうしたの？」

彼は困ったように笑ったから

思わず私も笑った

「蒼琉くんがいたからだよ

私ね、蒼琉くんと頑張れてよかった

ありがとう」

「どういたしまして」

彼との腐れ縁はきっと、ここから始まった

微笑む彼を見て私は思う

綺麗だ、と

もっと、知りたい

彼の隣にいたい

強く強く願って

そして気づいた

これが、恋なんだって