【中原中也】三枚上手な彼女

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紅葉さんの云う面倒な会合を終わらせて本部へと戻って来た私はさっそく、会合での内容の書類を作成していた。

つまり議事録というもので、録音していた内容を事細かに書き出して紅葉さんに提出する。

それがまた面倒なのだ。

イヤホンから会話の内容を聞いてパソコンにて文字を起こす作業は本音を云うとつまらない。



「A、もう着替えたのか。早いのう。」



紅葉さんに声を掛けられて録音機の再生を止めてイヤホンを耳から外した。



「はい。私はやはりスーツが落ち着きます。お貸しいただき有り難うございました。」

「中也も綺麗だと云っておったし、今日一日位はあのままでも良かったのではないのかえ？」

「いえ、此れが私のルーツなのです。」

「そうか。ならばあの写真は私だけのものじゃな。」



写真…。

そういえば写真を撮られていたのを今更思い出した。



「消してください！恥ずかしいです！」

「ならぬ。大切に保存しておくとしよう。」

「紅葉さん…！」

「化粧も頑張っておるな。私のAの愛いらしさが伝わって嬉しいと同時に複雑じゃ…。」



私がそれは如何いう意味ですかと尋ねた。

紅葉さんは目を細めて口元に笑みを作った。



「私だけの可愛いAではなくなったからのう。」



さらさらと私の髪に指を通す紅葉さんは少し寂しそうに見えた。



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