57話 ページ8
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店主にお酒を注文して、置かれたグラスを持ってゆらゆらと揺らす。
「…手前もこんなとこで飲むんだな。」
「私の質問に答えてくださーい。」
「チッ。」
中也君は顔を俯かせてボソボソと呟く。
聞き取りづらくて、もう一回云ってと云えば、今度は顔を上げて怒鳴るようにして声を荒げる。
「首領と会って、手前がなんかしおらしくすっから!こっちは気にしてやってンのに何も連絡寄越さねェでよォ!金も置いて行きやがって!」
矢張り彼の云った連絡が来ない相手は私で間違い無かったようで。
けれども、私達が連絡先を交換したのは太宰への嫌がらせの為であって、近況報告の為では無かった。
更に、仕事が重なり過ぎて中也君に連絡を取る事などすっかり頭から抜け落ちていたのも事実。
「…ん?気にして?」
「あ?だから、」
「心配してくれたの?」
中也君の言葉に少し引っ掛かり聞いてみれば、目を大きく見開いた。かと思えば前に向き直って店主に再びお酒を注文していく。
「…店主、どぎついやつ頼むわ。」
「すみません、注文キャンセルで。水をお願いします。」
「勝手に決めンな!」
「かしこまりました。」
「おい!」
私も店主もこれ以上、彼に飲ませるべきではないと考えが一致したのだった。
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作者名:汎用うさぎ | 作成日時:2023年4月25日 22時