86話 ページ37
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寝起きでボーッとする頭をゆっくりと左右に動かして、中也君を探すがこの部屋には居ない。
布団から起き上がり、自分の額や首に手を当てていくが熱はもう無いように感じた。
携帯で時刻を確認すると18時を過ぎている。
少し遠い場所からガチャリと音がして勢いで立ち上がって音がした方へと向かう。
そこは玄関で今しがた靴を脱いでいる中也君が居た。
「ああ、起きたのか。もう平気か?」
彼が目の前に居る事の安心。
こんな事、今まで無かったのに…。
中也君の胸にゆっくりと身体を寄せた。
「何処に行ってたの?」
「…買い物。病人に適当なモン食わせらンねェだろ。」
一瞬だけ、彼の片腕に抱き締められたその時、とくんと胸が高鳴った。
「まだ居てもいいの…?」
「そんだけ元気なら飯食わせたら帰す。」
すたすたと私の横を通りすぎた中也君の背中に、まだ一緒に居たいと口にするも、返答は無い。
買い物袋から食材を取り出していく彼は聞こえるか聞こえないか位の声量で言葉を発する。
「無理だろ…。」
「え?」
私の耳にはしっかりと届いた。
じゃあ、と言葉を続ける彼は私の目を見て云う。
「ポートマフィアに来い。」
「……え?」
「以前してたような仕事はやらせねェ。殺しもしたくねェならしなくていい。俺の仕事を手伝え。」
私がまたポートマフィアに…?
頭の整理が追い付かない私から顔を逸らした彼は何処か辛そうな表情をしていた。
「無理だろ?」
「あ…。」
「今はこんな風に馴れ合ってはいるが、俺達の立場はそういう事だ。分かったら飯が出来るまで大人しくしてろ。」
そうして私は云われた通り、別部屋でご飯のお呼びが掛かるまで大人しく待った。
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作者名:汎用うさぎ | 作成日時:2023年4月25日 22時