65話 ページ16
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時間というのはあっという間だ。
中也君とメールのやり取りをして時間を決めて、今日がその日。
来客を知らせる音で玄関を開けるといつもの格好ではなく私服の彼に新鮮味を覚えた。
「よォ。」
「…よォ?」
疑問符で挨拶を返した途端、頭を抱えてしゃがみこむ彼に焦った。とにかく焦った。
何かいけない事でもしただろうか。
気分悪い?とか一旦家に上がる?等聞いてみるも大丈夫の一点張りで立ち上がった彼に腕を引かれ目の前にある高級車の前で立ち止まる。
「乗れ。」
「し、失礼します。」
「…何後ろ乗ろうとしてたんだ。助手席座れ。」
「辞めた方がいいよ?後悔するよ?」
「あ?何云ってんだ?」
「助手席は好きな子乗せないと。後で三上なんか乗せるんじゃなかったって思うよ?絶対。」
「手前は鈍感なんだかそうじゃないんだかどっちだ。」
顔に手を当てる彼は、今はそんな奴居ねえから乗れと私を助手席に押し込む。
今は居なくてもこれからの事を私は云った心算だったのだけども。
そして運転席に乗り込む彼にどこに行くのか尋ねても、いいから黙って乗ってろと云われて車が走り出した。
ぼーっとしながら流れていく景色を眺める。
あの店いつか行ってみたいな、とか。
「…なんか喋れや。」
「黙ってろって云われた。」
「チッ。」
舌打ち…。
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作者名:汎用うさぎ | 作成日時:2023年4月25日 22時