ほっとけないホットケーキ【和泉一織】 ページ1
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バターが溶ける濃厚な匂いが私の鼻腔を擽り、ユラユラと匂いのする方へと足が動く
無意識に緩む頬は、どうしても垂れ下がる
匂いだけで満足出来そうな程
「そんなところから見てないで、入ってくればいいじゃないですか」
「バレてたの…」
バレバレですよ
そう呆れたように言う一織は、キッチンで楽しそうにフライパンを手にしていた
どうやらホットケーキを焼いていたようだ
そして、急激に放ち始める香りに私のお腹は空腹を訴え始める。幸い音は小さいが、一織が横でクスリと笑う
思わずムッとして
こんな美味しそうなものを作る一織が悪い、と半ば責任転嫁をして、出来上がるホットケーキから彼に期待の眼差しを向けた
「食べたいなら手伝ってください」
「合点承知之介!!」
ビシッと力強く敬礼
一織に指示された、フルーツを切る・生クリームをミキサーでかき混ぜる
簡単な作業のはずなのに足を引っ張ってしまう
「わっ」
「全く、貴方は一人で何をしてるんですか」
「うっ…。ごめんなさい」
「……謝る必要はありません。危なっかしいという意味です。見てて飽きません」
「ちょ、それどういう意味」
「だから、私のそばにいてくださいと言ってるんです。分かりませんか」
手の甲を口に当て、恥ずかしそうにする一織はとても可愛かったのと同時に私の気持ちに名前が付いた気がした
「うん。どこまで離れて大丈夫?」
「私の目が届く範囲まで、です」
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零 - とてもいいです!続き楽しみにしています。 (2020年3月3日 8時) (レス) id: 0a32322563 (このIDを非表示/違反報告)
緋乃(プロフ) - はじめまして。いつも汎用うさぎ様の作品を楽しみにしています(o^^o)新作も最初からきゅんとしてしまいました。更新頑張ってください! (2019年3月15日 8時) (レス) id: 30e32a3a6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:汎用うさぎ | 作成日時:2019年3月15日 7時