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つい先日にお邪魔させて貰った柴家に比べたら、私の住んでいる家はとても狭く、ボロく感じるだろう。

それに私でも屈まないと行けないところがあるぐらいだ、柚葉ちゃんのお兄さんからしたら天井が低くてたまらないはず。

『狭いですよね、すみません。』

大寿「別に、お前が謝ることじゃない」

『わ、』

私と私の荷物を軽々抱えて、柚葉ちゃんのお兄さんは家の中へと器用に進んで行った。


『助けていただいて、ありがとうございます。』


床に座らされた私は、彼の目を見ることがどうにも出来なかった。

正座をして膝に手を置いて、視線は上がらないまま胡座をかいている彼の腹のあたりを見て言葉を吐き出した。


大寿「どうしてあんな事になっていたんだ?」

『えっ』

大寿「理由があったんじゃないのか?
普通に考えて、理由がないのにそんなふうに詰められるのは可笑しいだろ」

『うーん……ホントはよく分からないんです。』


それに、家庭事情をほぼ初対面の人にベラベラ話すのもどうかと思ってしまった。


大寿「分からねえ……?」

『ちょっとウチ、複雑で』

大寿「親は?」

『母親は何をやっているか知りません、父も数年前に他界しました。』


柚葉ちゃん相手だったらある程度の信頼も築けていたから話せたけれど、どんどん深い所へ踏み込もうとする彼女の兄に答えるのは少し気が引けていた。

こんな話、聞いていて楽しい訳では無いから。


大寿「一人暮らしか?」

『まぁ、そうなります。』


極たまに叔母が姿を見せることもあるけど、彼女も自分の家庭がある。そう簡単には頼れないのだ。


大寿「そうか。」

『はい……』


何度か繰り返された質疑応答を切り抜けると、大寿さんはシンとしてしまった。

恐る恐る視線を上げてみると何かを深く考えている様子で、整った顔立ちがさらに際立つような凛々しい表情だった。


『ひぇ』

大寿「……何だ?」

『い、いえっ!!何でも!!!
とっ、ところで大寿さん、良かったら晩御飯食べていきませんか!?』


私の視線の意味に気付いているのかいないのか、彼は悪戯に片眉を釣り上げた。
そのせいで私は焦りが表に出てきてしまい、思わぬことを口走ってしまった訳だ。



大寿「お前が良いなら、頂こう。」






そうやって口走ったのが、この言葉がきっと私の後悔の始まりだった。

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作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時

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