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大寿「俺は……」


何かをもごもご呟いて、ようやく捻り出したような声でゆっくりと言葉を紡いだ。

『はい』

大寿「俺は、これ以上Aと一緒にいたら、今度こそお前を殺してしまうと思ったんだ。
三ツ谷から話聞いたなら、それも知っているだろ?」

『うん』

大寿「だから冷たく、遠ざけたつもりだった。
確かに愛している気持ちは本物だが、俺の愛し方は間違っていて、今さら俺が意見できることもない。
そうやって、お前を殺すかもしれない要因になるような人間と、お前はまだ一緒にいたいと思うのか」


大寿さんにしては珍しい、弱気な発言だった。

『はい。私、これでも丸々一週間考えましたから』

大寿「そうか」

『私の方こそ、こんな不器用で生きるのが下手くそな私と、この先も一緒にいてくれるだろうかと心配になったぐらいですよ』

大寿「そんなの、」

『大寿さんさえ良ければ、これから先もあたしと一緒に生きてください。』


初めて口にできた、私から大寿さんへの気持ち。

ようやく言えた、今はそれだけのことしか考えられなかった。
この場には三ツ谷くんも柚葉ちゃんもいるのに、私と大寿さん二人しか居ないようなそんな異様な空気に包まれている感じがした。



『私は、貴方の事を心から愛してるんです』

『あんな日々を過ごしてもまだ貴方のことが忘れられなくて。
だから、それはきっとこれからも変わることがない揺るがない気持ちです。』

『お願いします』


ここでようやく柚葉ちゃんや三ツ谷くんがあたふたし始めた。何も頭を下げることじゃない、って言うの。

大寿「俺は……俺も今でもAの事を愛している。
ただやはり、怖いんだろうな。Aのことを傷つけてしまうのが。」

『そういうときには三ツ谷くんも柚葉ちゃんも頼っちゃいます』

大寿「そう、か…………そうだな。」



大寿「俺の方こそ、この先も一緒に……隣にいて欲しい。
もう間違えない、大丈夫だ。今は俺にもAにも、頼れる奴らがいるからな」


口角を上げ、三ツ谷くんの方を見る大寿さん。

私も彼も、クリスマスイブのあの日からなにか毒気の抜けたような面持ちでいた。



大寿「退院は、いつ頃になるんだ?」

『まだ先みたいです』

三ツ谷「先生たちには俺と柚葉から言っておくよ。
けど、はじめのうちは誰かも一緒にっつーことになると思うけど、良いよな?」

大寿「ああ、構わねえ」


柚葉「なんかあったら、今度はちゃんと教えてね。」

『うん!でもそれは柚葉ちゃんもだよ?』




つい何週間か前の光景が嘘のように、明るくて優しい、そして心地のよい時間だった。

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作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時

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