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「緊張してる?」

『うん、ちょっと』


三日なんてあっという間だったと思うほどに時間が早く過ぎた。

早く今日が終われ、明日になれ、と毎日のように思っていたから、きっと神様からのご褒美だろう。


『…』ゴクリ


何人かの話し声が聞こえてきて、私のいる病室の扉が優しくノックされた。

部屋に入るよう促すと、見覚えのあるような窮屈そうなシルエットが見えた。


大寿「久しぶり、だな。」

『はい、お久しぶりです』


このとき、私と彼の視線が交わることはなかった。

大寿「話すことなんざねェ」

冷たい声だ、黒龍の下っ端の人たちと話す時はこんな感じのトーンだよね。

『うん、三ツ谷くんからこの前色々聞きました。』

大寿「は、」

『どうしても貴方の顔が見たくなってしまって、私の我儘で周りを困らせているのは承知の上です。担当医も頭を抱えてました』

大寿「だったら、何で」

『考えたんです、あれから。
確かに私と大寿さんの関係は歪だったのかもしれないけれど、どうして歪だったのかって理由もきちんと分かりました。

理解は、出来ないけど。でも、それでも私は貴方のことを好きで、愛しているんです。』

柚葉ちゃんや三ツ谷くんは何かがあったときに仲裁してくれる為にいるから、私たちの会話には基本的に口を挟んでこない。


大寿「………お前といる資格は、もう無い」

『初めて会った…いや、2回目に会った時から酷かったですもんね。
でも私ね、大寿さんと生活するようになってから、夜にぐっすり眠れるようになったんです。
貴方はきっとそれが私にとってどれだけのことか分からないかもしれないけれど、私はそこに貴方からの愛があると思ったから、だからまたもう一度貴方の言う愛と向き合いたい』

今度こそ、しっかり目を見て言うことが出来た。

世紀の大告白かってぐらいにバクバク鳴っている心臓、気を抜いたら倒れてしまうんじゃないかと思うほどの緊張。

全てが、今までで初めての経験だった。


『もし、よかったら……もう一度やり直しませんか』


やっと言えた。

それが嬉しくって、寂しい気持ちなんかまるで無いのに目尻に涙が浮かんでくるのだ。


柚葉「A、最後に聞くよ。アンタは大寿とまた恋人っていう関係になって、後悔しない?」


なんて、核心をつくような質問だった。

確かにまだ暴力に対しての恐怖が完全に無くなったとは言えない、けど、彼が私にしたことは何も力によるものだけではないから。





本当に危ないときに私を守ってくれた、住む家を、食べるものを、着る服を与えてくれた。

雨に濡れないように傘をさし、雫がこぼれないように涙を拭ってくれたのだ。

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作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時

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