愛してるってなんですか【東リべ】 (ページ5)

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翌日、いつものように柚葉ちゃんと会った瞬間焦った顔をしながら兄貴に何もされていないか、と聞かれた。

『ただ家の前まで送って貰っただけだよ？』

柚葉「ほ、本当に…？」

『本当に』

ほっとした様子で胸を撫で下ろす彼女の姿に私も安堵したけど、どうしてそこまで大寿さんと距離を詰めるのを嫌がるのかが気になってしまった。

『柚葉ちゃん、お兄さんと何かあった？』

一日中そんな事が気になって、ついには放課後聞いてしまった。

彼女は一度肩を揺らし、その瞳には焦りの色が見えたような気がした。

柚葉「だ、大丈夫。心配かけてごめん。
Aももう部活だよね、また明日ね」

『うん、また明日！』

そうして私は週に2、3度ある家庭科部の活動を行うために被服室に向かった。

週によって活動内容が調理系か被服制作系かが変わるのだ。

当面の間は今度のコンテストに向けての作品を制作する。

私は結構入賞をしてきていたが、私たちの世代で他にも入賞をしている子が近くの中学にいるらしい。
何度か顔を合わせたことがあるけど、お互いに名前は知らないんだ。

また次のコンテストにもきっと作品を出すだろうから、その時にまた会えたら話しかけようと決めているの。

『先生、使いたい生地があるんですけど…』

いつものようにミシンとにらめっこ。
この生地の色に似合う糸は本当にこの色なのか、私の頭の中で構想としてある作品のイメージは、この素材で表現できるのか。

『(うーん、難しいな。
これは持ち帰ったり出来ないし、今日はミシンの作業だけでも絶対に終わらそう……)』

深呼吸をしたあと、気合を入れてミシンに糸を通した。

これが私のスイッチを入れる方法だ、こうして作業に取り掛かると重大な用事じゃない限り話しかけられることはないし集中して取り組める。

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「……さん、聖さん。」

どこか遠くの方から自分の名前を呼ぶ声が聞こえてきて、集中の糸がプツリと途切れた。

『は、はいっ！！』

「今日も良い集中っぷりね、けどもう最終下校時刻だわ。
他の生徒たちももう帰ったし、貴方もそろそろ帰宅しなさい」

私の集中が途切れないように今までずっと様子を見ていてくれたらしい。窓からは夕日が射し込んで来ていた。

『(あともうちょっとだけやりたいけど、これ以上やったらもっと進めたくなるだろうし、今日は諦めるか……)』

『すみません、お世話になりました！』

今でこそ、この部活には慣れた。けれど入学当初はその身長から色んな運動部から勧誘がきて大変だったことを思い出していた。