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しんしんと雪の降る様子が窓の外から窺えた。
『(今日が12月の24日。クリスマスイブってことは、大寿さんは夜遅くまで帰って来ないはず)』
ガタガタ、と少し離れた部屋から音が聞こえた、今家の中にいるのは柚葉ちゃんと私の二人だけ。
八戒くんを見送る柚葉ちゃんの声が聞こえたあと、誰も家からは出ていっていないから、合っているはず。
可愛らしい着信音には似合わないセリフや、少しの騒がしい音。
『だめ、そんなこと……』
ハッキリ聞こえたのは、私の大好きな友人の小さなつぶやき。
"「大寿を、殺さなきゃ……私が八戒を守るんだ。」"
自分と同じ道を辿ろうとしている彼女のことを、どうしても止めたかった。
しかし生憎、私の腕は重たい錠で繋がれていた。
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「オマエは本当にポーズばっかだな」
とある教会で、まるでその場所には似つかないようなことが起こっていた。
「あ、がッ」
「本気で殺しにきたのかと少しは期待したぞ」
簡単に言えば他所の人たちを巻き込んだ兄弟喧嘩、ただそんな微笑ましく思えるような喧嘩ではなく本気の殺し合いと言っても過言ではなかった。
「柴家の問題に口出すのはこれで二度目だぞ!?」
大柄の男は、自分より一回りも二回りも小さな金髪の少年を睨みつけた。
彼の怒りは収まることなく、その少年へと向けられる。
しかしそんな大男に音もなく近寄った影がふたつ。
ドッ
「………は、?」
「ン?」
『おねがいッ、そんなことやめて……柚葉ちゃん』
ポタリポタリと、自分の中から溢れる血液が床を染めた。
柚葉や小柄な少年は勿論、大柄な男も目を丸くして驚いていた。
大寿「何、してる」
『ごめ、なさい……なんか分からなくて、貴方のことを守らないとって……柚葉ちゃんを、私と同じようにはしたくないから………っ』
柚葉「な、なんで……A、?」
『ごめんね、柚葉ちゃん、体が勝手に動いちゃって………』
少し、期待した。
良くやった、ありがとう、大丈夫か?なんて貴方が優しい言葉を私に掛けてくれるんじゃないかと思って。
大寿「フン、お前は俺の盾に過ぎねえ。
俺を守ったつもりになって死ねるなら、さぞ幸せだろうな?」
『は、ハハ………』
大寿「何笑ってやがる。」
『もう、分からないです、私。
それでも、こんなこと言われても私に愛をくれたのは貴方だけで、そんな貴方が、私はまだ大好きだ………』
最後に見た貴方の顔はとても哀しそうに見えた気がした。
きっと私の涙で視界がボヤけて、都合よく見えていただけなんだろうな
『やっぱり、愛してる』
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作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時