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『い、や………やだ、三ツ谷くん離して…お願いだからっ!』
三ツ谷「大丈夫」
『ごめ、ごめんなさい、ごめんなさいッ……』
大寿さんが振りかぶったのを見て、次に来るであろう痛みを想像して目をつぶった。
本音を言うとね、もう、痛いのは嫌なんだ。
『………っ、?』
中々痛みは来なくて、優しい香りに包まれているような感覚がした。
目を開け、そのまま視線を上げると少し暗かった。
三ツ谷くんは私を庇って、守ってくれていた。
三ツ谷「……ッ、確かに、これは痛えな」
柴「テメェは、何の用事だァ?」
三ツ谷「お前と聖さんがどういう関係なのかは知らねえけど、せっかく可愛いのが台無しじゃねえかよ。」
柴「………ほォ?喧嘩なら買うぜ」
先程まで臨戦態勢だった大寿さんは、面白そうな話を見つけたとでも言わんばかりに愉しそうな表情になった。
そうして、私の分からない言葉が並んでいく。
"トーマン"とか、そのトーマンの"2番隊隊長"とか言っていた。
隊長ってことはもしかして、結構強いってことになるんじゃないの?
それとあとは、弟を誑かしている。と言っていた。
柴「今日のところは勘弁してやる、いいな。」
『あ、ッ……!』
柴「別に何もしねえよ、俺は帰らねえから寝に帰ってこい。」
『…………』コク
三ツ谷「へぇ。ホントに付き合ってんだ、意外。」
柴「ア?」
三ツ谷「似合わねーなってだけ」
柴「やっぱ一度死んどくか?」
三ツ谷「止めろよ、どうせまたスグに会う……だろ?」
柴「……そうかもな」
二人は意味深な笑みを浮かべて、そのときは何とか九死に一生を得るって感じだった。
大寿さんもだけど、いつもの優しそうな頼りがいのある三ツ谷くんとはまた違った雰囲気で少し怖かった。
三ツ谷「ウチ来るかって言いたいとこだけど、柚葉ン所の方がいい?」
『わか、んない』
三ツ谷「でもやっぱりウチかな、また包帯ズレてるし。治療もちゃんとしよう。」
『うん』
それから、三ツ谷くんは先ほど起こったことを柚葉ちゃんに連絡したようだ。
三ツ谷家に到着すると柚葉ちゃんと八戒くんが待ち構えており、私は潰れてしまうんじゃないかと思うほど抱き締められ、心配された。こういうところが兄妹だと思わせて心が痛くなったのは、誰にも言ってない。
三ツ谷「ガーゼとか結構しっかりされてるけど、自分でやった?」
『ううん。これは、全部大寿さんがやってくれるの』
三ツ谷「アイツが……?待てよ、それ冗談かなんか?」
『違う、あんなとこしても、それでも大寿さんは……ちゃんとあたしのことを愛してくれてる、それだけなの』
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作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時