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『ごめんねっ、もうこんな時間!!!』
話していたのが思っていたより盛り上がってしまって、勉強に手をつけるのが遅くなった。そのお陰でもう外は真っ暗。
柚葉「いや、こちらこそこんな遅くまでごめん、送るよ。」
『えっ!?いやいや、いいよ!
ほら、ウチすぐそこだしさ…!!!』
真っ暗だし、この辺りは治安の善し悪しでいうと良い方だから送らなくても良いと言っているのだけど、中々柚葉ちゃんが折れてくれない。
大寿「……何やってる」
すると、そのうるささに呆れたのかとうとうお兄さんまで降りてきて、玄関前で言い合う私たちを見下ろした。
柚葉「兄貴は関係ないでしょ、Aもう帰るから送るだけ。」
『あ、いえあの本当に大丈夫です、お騒がせしました!』
大寿「家は近くなのか?」
『え?あ、はい』
大寿「それなら送っていこう。」
予想外のそんな言葉に、私たちは数秒程度固まった。
『え、あの…えっと、』
大寿「丁度今から外へ行くところだったんだ。
別に構わねえだろ、柚葉?」
柚葉「は?えっと…あ、あぁ。」
これは柚葉ちゃんも状況をよく分かっていないみたいだ。
もしかしたら、いつものお兄さんはこういう感じではないのかな。
『それなら、お言葉に甘えさせて貰います。
じゃあね、柚葉ちゃん。また明日!』
柚葉「うん、また明日」
難しい顔をしたまんまの彼女が少し気がかりだったけど、もしお兄さんと仲良くなれたら柚葉ちゃんの笑顔がもっと増えるんじゃないかと思った。
『柚葉ちゃんのお兄さん、お名前聞いてもいいですか?』
よく肩を並べて歩くとはいうけれど、彼とは大分身長差がある。中学2年の女子としては、私は大分身長が高い方だからなんだか会話をするときに見上げるのは慣れない。
大寿「あぁ、大寿だ。大きいに寿で大寿」
『たいじゅさん、カッコイイお名前ですね』
大寿「そうか?」
『えぇ、素敵なお名前で……とても似合ってると思います』
大寿「そういう事を言われるのは初めてだ。」
『そうなんですね、初対面なのにいきなりこんなこと言ってごめんなさい。
……あっ、家ここなので、送ってくれてありがとうございました』
大寿「………そうか。
夜道には気を付けろ、それとまたいつでも家に来ると良い。」
『あ、ありがとうございます!』
それがとても嬉しくて、整った顔立ちのせいか胸がドキドキ鳴っていた。
私がアパートの部屋に入るまで、彼はその場で見守っていた。
初めは怖くて変に緊張したけれど、もしかしたら良い人なのかも。
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作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時