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『お、お邪魔します……』

柚葉「そんな緊張すること無いでしょ、何回も来てんじゃん?」

『あ、うん。それはそうなんだけど』


今日は冬休みの最終日。
お互いに宿題の忘れている箇所がないかの確認も兼ねて、柴家にお邪魔している。


柚葉「もう休み終わるの、ちょっとヤダな」

『もう少し冬休み長くてもいいよねぇ』

柚葉「ホントに。
まだ2年だから受験がーとか言われることなくて助かってはいるけどさ。」

『そっか、来年はもう受験だね私たち!』


なんでもないような、普通の会話をして宿題を見せあったりした。もし、私が今も"普通"の中学生だったら、こんなことは当たり前で、特別喜ぶことでもないんだと思う。



柚葉「そうだ、晩御飯食べてくでしょ?」

『え、あ……いや、申し訳ないよ!』

柚葉「今さら何言ってんの、良かったら作るの手伝ってほしいなと思って。」

『わ、わかった。手伝うよ!』


柚葉ちゃんは、以前私が家に帰りたくないと思っていたことを察してくれていたのだと思う。自分が無理やり引き止めたんだから、私が誰かに文句を言われる理由は無いでしょ?っていうの。


『今日のご飯は、なんだこれ』

柚葉「ビーフシチュー!今日は圧力鍋に材料突っ込むだけだけどね」

『圧力、鍋。凄いねなんか、これ』

柚葉「そ?」


慣れた手つきで食材を切る姿に、同性ながら惚れそうになったのは秘密。


柚葉「うん、あとはもう火にかけてできるの待つだけ」

『なんもお手伝い出来てないけど、ホントにご飯食べてっていいの?』

柚葉「もちろん。」

『あ、でも待って、ちょっと連絡してくるね!』


貴方の家で晩御飯を頂くので、帰りが遅くなります。と伝えるのは変なことだよね。

けど、私は今あの人に生活をさせて貰っている身であって、そういう連絡は逐一しなさいと言われているから。


『んと、これで……よし。』


メールを送信しました。

そんな画面にホッと胸を撫で下ろした。
一度だけ連絡もせずに帰りが遅くなってしまったことがあったのだが、その時にはすごい剣幕で怒られるのかと思いきや、死ぬかと思うぐらいに力いっぱい抱き締められた。

その形相は人でも殺したのかと思うほどだったけれど、何だかんだ大事にされているのだろうと感じて、それがとても嬉しかった。




愛しているから、俺を裏切らないでくれ。




あの大寿さんに縋るように言われて、意外な一面だと思った。
それと、そんなことを言われるぐらいに愛されている、と実感できる満足感と優越感を感じた。

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作者名:HAL | 作成日時:2023年11月15日 23時

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