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『……あの、ここって』
大寿「さっきも言ったが何日かはここで生活してもらう、良いな。」
『冬休みだから、約束してる日に外出れたらいいですよ』
なんて、ちょっと雑だろうか。
けど本当にあの家に愛着がある訳じゃないし、寧ろ離れられて嬉しいという気持ちの方が大きい。
ソファの上で三角座りしながら返事をすると、私の隣に大寿さんがどかっと座った。
『わ、』
ソファが沈んで思わず大寿さんの方に倒れそうになった。
彼の腕に寄りかかる形になって、ドキッと心臓がなってしまう事に気が付いた。
でもきっと、これはそういうのじゃない。
体を起こそうと試みると既に反対側に彼の手が回されており、元の体勢にも戻れないし寧ろ膝枕をされる形になってしまった。
『な、なんですか、ちょっと恥ずかしいです』
「お前は、本当に綺麗だな。」
『は、はぁ？』
「どうしてあんな事になったのか詳しく教えろ」
真っ直ぐ私を見下ろす琥珀色の瞳に吸い込まれそうになって、気付けばスラスラと事のあらましを説明していた。
『(あ、やばい。なんか泣きそ)
そ、れで……私のお父さんは、本当はあの人の浮気相手だったみたい、なんです』
『古い記憶の中にいる私の父は、本当のお父さんじゃなくて、私を愛してくれたあの人は……もう、いないんです』
『あんなことして、いまさらだけど、私は愛されたかった。
それがお父さんでも、お母さんでも』
どんどん溢れる涙を流さないように手で顔を隠した。
初めて嘘偽りなく語られた私の胸の奥にあった気持ちを、彼は受け入れてくれた。
「おい、忘れたのか。俺はずっとお前を愛していると言っただろう？」
そんな、嘘みたいな馬鹿みたいな話。
都合が良すぎると言えばそれまでだけど、それが嘘でも、偽りでもまやかしでも今はそれで良かった。それでもいいから彼の言う愛とやらに縋りたくなった。
『たしかに、言ってましたね。
ふふ、あたしその時泣きながら追い返そうとしたんだっけ、はは』
何年も前のことみたいに感じる、その日の出来事。
訳の分からない行動ばかりではあるけれど、その理由が本当に愛だというのならば、ほんの少しは納得できるかもしれない。
それに不思議と、大寿さんがいるときはぐっすり眠ることが出来た。
『あぁ、神様。どうかこれが夢ではありませんように。』
目を閉じる前に頭に浮かんだその言葉、うっかりと口に出してしまっては、大寿さんに大丈夫だと強く言われた。
彼のしていることを知っているからこそ、その言葉にも説得力が伴うわけだ。
『おやすみなさい。』
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作者名：HAL | 作成日時：2023年11月15日 23時
