愛してるってなんですか【東リべ】 (ページ25)

今日:42 hit、昨日:31 hit、合計:43,972 hit

24 ページ25

『は、はァっ、ど…どしたら、』

雨の降りしきる中、私は家の中から出ていた。

今日はあの男が来てしまったから、他に家を尋ねてくるような人間は他にいないはずだ。

外からしっかり鍵をかけて、思考がまとまらなくて傘も持たずに外へ出てきてしまった。

雨宿りをするわけでもなく、服が重たくなるのを感じながら近くの裏路地でしゃがみこんだ。

やってはいけないことの一線を越えてしまったこと、バレたらどうしよう、誰かに知られてしまったら、どうにかなかったことに出来ないか。色々な考えが、泡のように浮かんではどうにもできずに弾けていく。

『………もう、やだよ』

雨なのか涙なのか、頬を撫でる水滴は冷たくて、自身の体温も下がっていることを感じていた。

こんな時に柚葉ちゃんのことは頼れない。

どう転んだとしても、一旦は家に帰ってアレをどうにかする必要がある。

震える手をおさえこんで精一杯に強がったとき、不意に私に降り掛かってはずの雨が止んだ。

『……？』

否、私に傘を差してくれた人がいたのだ。

「何してる、こんな時間に。」

『……』

「傘は無いのか？服も濡れてるじゃねえか、」

『…』ｺｸﾘ

「帰って服着替えねえと風邪引くぞ、送るから」

『だ、ダメっ！！』

「何か帰れない理由があンのか？」

『あ、ある』

「まさか、あの女か？アイツはもう近寄らねえ約束だろ？」

『違う、違います。あの人じゃないです。』

着ている服の裾を翻して私の家へ向かおうとする大きな背中を止めたくて、袖を掴んだ。

「何だ？」

『いかないで、』

「どうしてか言え、俺なら力になれるかもしれねえぞ。」

『力に……？ほんとうに、なってくれますか？』

そういえば、この人は犯罪も肩代わりするような組織のトップだって聞いたことがある。

「あぁ、構わねえが。」

『わ、わたし、殺しちゃったんです……ひと、を。』

顔を見ることなんてまるで出来なくて、靴を見ながら呟くように言葉をなんとか捻り出した。

自分でも驚くぐらいに、彼の袖を掴む手や声が震えていた。

「ほォ？」

私とは真逆で、なんだか楽しそうな声が降ってきて思わず顔を上げて彼の顔を見た。

片方の眉をつりあげて、その口角は上がっていた。

「なんとかしてやる。お前、家でやったのか？」

『……はい』

「俺に任せろ、ソレは無かったことにしてやるよ」

『ほ、ほんとうですか』

「俺は嘘はつかねえ。」

それから直ぐに雨が止んで月の光が差してきた。

何を考えているか分からないけれど、月の光にうつされた大寿さんの表情はとても艶やかだった。